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カフェインとどう付き合う?薬物依存専門家の視点

カフェインとどう付き合う?薬物依存専門家の視点

〈話し手〉 松本 俊彦 Toshihiko Matsumoto(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部 部長)

 カフェインが含まれる食品・飲料にはたくさんの種類があります。そのうちエナジードリンクは、近年中高生をはじめ特に若年層に日常的に飲まれるようになりました。人気の理由はコンビニエンスストアや自動販売機でも販売されるなど手軽に買い求められる利便性だけではなく、カフェインが含まれていることとその作用が関係しているといわれ、飲み方やその後のカフェインとの付き合い方によっては健康に影響を及ぼす可能性が指摘されています。そこで今回は、薬物依存研究の第一人者である松本俊彦先生にその背景や周囲の役割についてお話しいただきました。

カフェインは元気の前借り

 最初にカフェインの作用について整理します。働いている人なら1杯のコーヒーで頭がはっきりとし「さあ、やるぞ!」などと気分転換をした経験をお持ちの人もいると思います。これはコーヒーに含まれる、カフェインの効用です。カフェインには、それほど強くはありませんが、大脳を興奮させる作用がありますので、眠気が覚めて気分が高まったように感じます。その他に心臓の収縮力を強める作用や血管を拡張させる作用、おしっこを増やす作用などもあります。実際にカフェインは、総合感冒薬や鎮痛薬といった医薬品などにも配合されている成分です(エナジードリンクやガムなどの食品に配合されるカフェインは食品添加物で、医薬品と配合目的が異なるが、成分としては同一)。
 子供のときにはじめてコーヒーを飲んだら胸がドキドキして眠れなくなったという人もいるように、カフェインは食品にも含まれる成分ですが、体に影響を及ぼします。
 カフェインを摂ると一時的に元気が出て、勉強などの能率が高まったように感じます。ただしカフェインで元気になった後には虚脱感を覚えます。つまり、元気の前借りをしているといえ、カフェインが代謝されて体から抜けてしまうと、元気や気分は摂取前より低下してしまうのです。その虚脱感に対応しようとカフェインをまた摂ると、摂り過ぎて気分が悪くなり、結局、パフォーマンスはさらに低下してしまいます。カフェインを摂り続けて体が慣れてくると、元気を出すためにより多くのカフェインが必要になります。これは身体依存といわれるもので、使用しているうちに量を増やさないと効果が得られなくなるという性質です。

若年者とカフェイン

 成長過程の若年者では体の代謝機能がまだできあがっていませんので、成人よりもカフェインの血中濃度が高くなるといわれています。体や気分に影響を及ぼすカフェインに対する感受性は個人差が大きく、カフェインを飲みつけていない若年者には効果が強く現れますので、カフェインを控える配慮が必要です。しかも、もともとメンタルヘルスに問題を抱えている若年者では、カフェインによってパニック発作を起こしたり、不安な気持ちが増強されたり、感情が不安定になって怒りっぽくなったりするという影響が現れることがあります。

コラム

 アメリカ精神医学会はカフェインについて、身体依存があるが、精神依存はないという見解を示しています。つまり、カフェインを止めようと思えば、タバコやアルコールよりも容易に止めることができるといえます。

若年者のカフェイン摂取の背景

 では、次に若年者がカフェインを摂取する背景をみてみましょう。カフェインを多く含む食品は、コーヒーをはじめ苦味を感じるために若年者が好まないものが多いです。そのため食品からカフェインを大量に摂取しようとすることは、若年者にとっては難しいものでした。しかし、エナジードリンクがその壁を取り除き、若年者にカフェインを摂取することを容易にしました。これはエナジードリンクにはカフェインが多く含まれていますが、砂糖が多く含まれることにより苦味が隠され、若年者にとっても飲みやすい飲料になっていることが考えられます。
 2010年代前半のことですが、エナジードリンクの自動販売機による販売が始まりました。エナジードリンクは食品ではありますが、エナジーということで元気が出るという印象を持って飲む人も多く、前出のような元気の前借りがしやすい環境に変化したと考えられます。それは当然大人だけでなく若年者にとっても同様の環境変化であり、低い年齢からカフェインに頼ることが容易になりました。

若年者がカフェインを摂り過ぎないために

 では、こういった環境変化から若年者を守るにはどうしたらよいかということですが、やはり周囲の見守りが重要であると考えます。日本ではエナジードリンクが進学塾や部活の差し入れに使われることがあるようですが、これは外から摂取する物質で自分の気分やパフォーマンスを変えるドーピングのようなものといえ、10代の成長過程の子供たちには十分な配慮が必要です。
 また、イタリアでは15歳以下にはエスプレッソコーヒーを飲ませないという暗黙の了解があります。諸外国には1日のカフェインの摂取量を示している国があるように1)、社会や周囲の大人が一緒に子供の健康を守ることが必要です。

表1 海外のカフェインのリスク評価・管理機関等の状況

出典:内閣府,食品安全委員会.ファクトシート「食品中のカフェイン」
https://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_caffeine.pdf

カフェインの刺激を求めてOTC医薬品の乱用に

 日本は世界の中でも違法薬物の規制が厳しい国です。麻薬や覚醒剤の乱用は他の国よりも少ないのですが、薬物乱用がないわけではありません。エナジードリンクが発売される以前から10代が乱用する主な薬物は、薬局・ドラッグストアで簡単に入手できるOTC医薬品の総合感冒薬、鎮痛薬、咳止め薬などでした。それらにはカフェインの他に、メチルエフェドリン、ジヒドロコデインなど気分を覚醒させる成分や、クロルフェニラミンマレイン酸塩など鎮静させる成分が配合され、それぞれの量は少ないのですが気分の変動を起こします。決められた用法・用量を守らず大量に服用すれば、体や心に影響を及ぼします。
 エナジードリンクからOTC医薬品に手を伸ばすことも、当然起こります。エナジードリンクを連用していると、身体依存によって1本飲むだけでは以前と同じ効果が得られなくなります。エナジードリンクを1度に10本も飲むのは量的にも経済的にも負担ですから、薬局やドラッグストアで、またインターネットで簡単に入手できるOTC医薬品であるカフェインの錠剤を利用するようになります。身体依存のため使用量が次第に増えて大量になった例もあります。このようにして若年者はカフェインに触れ、場合によってはカフェインの乱用へとつながっていきます。カフェインに精神依存はないとされていますが、薬物乱用の問題につながっていることを広く知ってもらうことが必要であると考えます。

薬局・ドラッグストアはゲートキーパー

 OTC医薬品は、適切に使用することで軽度な不調に役立てるものです。カフェインを含有するものがすべて悪いのではなく、必要なときに目的に合った製品を選択できる知識やスキルが大切なのです。例えば、疲れたときや病気のときには、滋養強壮を目的にビタミン類やアミノ酸、カフェインなどを含む栄養ドリンク剤があります。食品の清涼飲料水とは異なり、「1日1本」などと用法・用量が決まっていて表示されています。製品の特徴を知り、賢く使い分けるために、薬局・ドラッグストアでは薬剤師や登録販売者にも相談できます。
 自分自身や子供たちを守るために、何を選び、どう使うか、リスクをどう避けるかについて、健康情報を入手し、理解し、利用できる力を身につけていただきたいですね。

【参考】

1)内閣府,食品安全委員会.ファクトシート「食品中のカフェイン」
https://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_caffeine.pdf

コラム

 多くの人に知っておいていただきたいのは、エナジードリンクを頻繁に飲む人の中には少数ではありますが、つらい日々を生きるためにカフェインの効果を利用している若年者や子供がいることです。
 周囲の大人が気づいて「なぜカフェインを止めないの?止めなさい」と叱れば、子供は隠れて摂取します。
 生きるためにカフェインを必要とする子供の一番大きな問題は、困っているときに周りの人に相談することが苦手なこと、そして相談できる人がいないことです。

 人は誰もが周囲の人や何かに支えられて生きているのであり、困ったときやつらいときに頼ることは恥ずかしいことではありません。カフェインを必要とする子供は、頼ることや支えを求めることにも不器用で、1つのことに依存して自力で何とかしようとします。それがカフェインやさらに問題のある薬物にならないよう、地域の社会資源や様々な人とのつながりが不可欠です。

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