微熱かな?
鼻水、のどの痛み・・・
風邪と新型コロナ
ウイルス感染症、
インフルエンザの違い

新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、体調管理に気を抜けない日々が続きます。人との接触を避けながら、毎日流れてくる感染者数や患者の容態を伝えるニュースを前にちょっとした体調の変化さえも心配の種になってしまっているのではないでしょうか。特にのどの違和感や微熱・発熱、せきや倦怠感などは、風邪の典型的な症状であると同時に新型コロナウイルス感染症の症状の一部ともいわれており、「ひょっとしたら自分も」という可能性が不安感をかき立てます。

ここでは、微熱などの初期症状が似ている風邪やインフルエンザと新型コロナウイルス感染症との違い、感染予防などについて紹介します。

2020年11月30日作成
2023年10月18日更新
(一部、最新情報に基づき、当社で追記更新を行っております)

監修:永武 毅 先生(桜みちクリニック 院長)

微熱が続く原因は新型コロナウイルス感染症?風邪などとの見分け方

微熱(発熱)などの初期症状は新型コロナウイルス?

新型コロナウイルス感染症の初期症状は微熱を含む発熱やせき、倦怠感など、風邪やインフルエンザに似ており、初めの段階で区別することが困難です。
ただし、症状が続く期間に違いがあり、風邪やインフルエンザは発症から3~4日目をピークにその後改善するのが一般的。それに対して、新型コロナウイルス感染症はそれよりも長く7日間前後症状が続きます。また、重症化する程度にも違いがあり、新型コロナウイルス感染症の場合には患者さんのうち約80%が自然に快方へ向かう一方で、残りの約20%は肺炎を合併して入院、さらにその一部が重症化して集中治療などを必要とするとされます。※1これに対し、風邪やインフルエンザは肺炎をきたして入院にまで至ることはまれです。また、現時点では疫学研究が不足しているため不明な点は多いものの、人によっては、急性期症状が遷延する(罹患後症状※2、いわゆる後遺症が出現する)こともわかってきました。

  • ※1 2021 年末に流行株が、感染・伝播性が非常に強いオミクロンに置き換わって以降、重症化する患者の割合は低下した。
  • ※2 新型コロナウイルス罹患後、少なくとも2ヵ月以上持続し、また、他の疾患による症状として説明がつかないものと定義されている。

新型コロナウイルス感染症であるかどうかを明らかにするには、医療機関などでPCR検査などの病原体診断を受ける必要があります。これで陽性となった人が新型コロナウイルス感染症の「感染者(確定患者)」となります。また、ウイルスがうつる可能性がある期間(発症2日前~)に、必要な感染予防策をとらないで患者に触れたり、近い距離で長時間接触したりした人は「濃厚接触者」、つまり「新型コロナウイルスの感染者である可能性が高い人」と考えられ、検査の対象となります。

こちらの記事もチェック。
微熱

新型コロナウイルス感染症・風邪・インフルエンザの違い

下記に、普通の風邪・新型コロナウイルス感染症・インフルエンザの違いを表にしました。

症状 普通風邪 新型コロナウイルス感染症※4 インフルエンザ
伝染性 あまり強くない
(飛沫または接触感染)
非常に強い
(飛沫または接触感染)
強い
(飛沫または接触感染)
発症 ゆっくり ゆっくりまたは急激な悪化 急激
罹病期間 7~10日 7~10日前後※3 約1週間
発熱 あっても38℃くらいまで
(微熱程度のこともある)
37.5℃以上の発熱が4日以上続くことがよくある 高熱38℃~40℃
頭痛 軽い 場合によってある 強い
強い嗅覚・味覚異常 ほとんどない 場合によってある ほとんどない
全身の痛み ない~軽い 場合によってある よくある(強い)
だるさ・脱力感 軽い 場合によってある よくある(強い)
鼻水・鼻づまり よくある ほとんどない 場合によってある
せき 軽い よくある
(途切れず続く乾いたせきが多い)
よくある(強い)
息切れ ほとんどない 肺炎を合併すると息苦しさ、呼吸困難など起こることがある ほとんどない
  • ※3 重症化例では数週間に達することもある。また、治療や療養が終わっても一部の症状が長引く人がいることがわかってきている。
  • ※4 WHO は EG.5系統を注目すべき変異株(VOI: Variant of Interest )に、欧州疾病予防管理センター(ECDC)は 2023年8月10日に他の変異株と合わせて“XBB.1.5-like + F456L”の一群を VOI に指定した(国立感染症研究所 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株 EG.5.1 系統について 2023年9月7日時点参照)。「EG.5」は「エリス」の通称で呼ばれている。
    「エリス」という通称はギリシャ神話の女神にちなんだもので、ソーシャルメディア上で名付けられたとされている。

新型コロナウイルスの感染を予防するには

新型コロナウイルスへの感染が心配な日々の生活。自分を守るためにできる第一のことは、ウイルスの感染経路を理解し、それを避けることです。

新型コロナウイルスの感染経路は飛沫感染、接触感染と考えられています。感染者のせきや発声によって生じる唾液や小さなしぶきを吸い込んだり、それに触れた手で口や鼻などに触れたりすることで感染するとされています。これまで感染が確認された人のうち約80%の人は他の人に感染させていないと考えられている一方で、特に「密閉」(換気が不十分な閉ざされた空間)・「密集」(多くの人々が集まっている)・「密接」(近い距離で会話や発声が行われる)の「3つの密」が重なる環境では一人の感染者が複数の人に感染させるなど感染症の拡大リスクが高いとされています(換気の悪い環境ではせきやくしゃみがなくても感染すると考えられています)。

PCR検査などで陽性と判定された感染者(確定患者)と長時間接触した人も濃厚接触者として注意が必要です。濃厚接触者の要件には、感染予防策が不十分なままに1m程度の近い距離で15分以上接触することなどが含まれています。これは公共交通機関内や外出先でも起こり得ることであり、「3つの密」の回避がどれほど重要であるかを物語っています。また、「3つの密」を避けることは、自身を守るだけでなく、他の人へ感染させることも避ける「新しい生活様式」の実践につながります。「新しい生活様式」の実践例としては、他に以下のようなことが挙げられています。

  • 人と人との距離をとる(Social Distancing:社会的距離)
  • 手洗いを徹底し、外出時はマスク※5を着用する
  • せきエチケット(せきをする時はティッシュや上着の袖などで口・鼻を覆うなど)を心がける
  • 家や職場の換気を十分にする、十分な睡眠や栄養などで自己の健康管理をしっかりする など

※5 一般的なマスクでは、不織布マスクが最も高い効果を持ち、次に布マスク、その次にウレタンマスクの順に効果があるとされています。同じ素材のマスクのなかでも、自分の顔にぴったりとフィットしているマスクを選ぶことが重要です。
また、これまで屋外では、マスク着用は原則不要、屋内では原則着用とされていましたが、2023年3月13日以降、マスクの着用は、個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断が基本となりました。

このように健康状態に気を払う日々のなかで、倦怠感や微熱を含む発熱やせきなどといったのどの異変のような、風邪めいた症状が現れた時には要注意。特に陽性の疑いのある人や濃厚接触者と接触した可能性がある場合には、より一層の注意を払う必要があります。自身の健康状態を記録しながら、かかりつけ医や各地域の相談窓口(後述)へ相談してみましょう。

微熱だけなら風邪薬を使用できる?新型コロナウイルス感染症の治療方法

風邪かなと思ったら風邪薬をのんでもいい?

微熱やのどの痛み、せきなど風邪のような症状が出た時に、「もし新型コロナウイルス感染症だったら?」と不安に思われる方も多いはず。特に初期症状では風邪かコロナウイルスかの区別が難しいのですが、風邪を疑う強い症状が出たら、必要に応じて風邪薬を服用することも選択肢の一つです。

市販されている風邪薬は、ウイルスを排除するのではなく、のどの痛みや発熱といった諸症状を緩和する対症療法のための薬です。風邪には特効薬というものはなく、自分の体力・免疫力で治すしかありません。まずは体力の消耗を防ぐために、体力を消耗してしまう風邪の諸症状に対して早めに対処することが良いと考えられます。
新型コロナウイルス感染症については治療薬の研究が進んでおり、開発が進められているところです。

「風邪かな?」と思った時には、まずは不要な外出を控え、毎日体温を測って記録しておくことが大切です。一般的な風邪であれば3~4日をピークに改善へ向かっていきます。それでも症状が良くならない場合は、風邪ではない可能性も考慮することになります。

微熱でも気になる症状があれば医療機関を受診しよう

普通の風邪であれば風邪薬を5~6回程度服用すれば症状が緩和されてくるのですが、それでも効果がみられない場合には、風邪ではない可能性も考えられます。服用を中止し、医療機関への相談を検討しましょう。また、冬には、季節性インフルエンザ等、発熱やせきを起こす感染症が流行しやすくなります。こうした感染症と新型コロナウイルス感染症の症状は非常に似ています。症状が急激に悪化したり、急な高熱や全身に強い痛みが出たりした場合には、インフルエンザである可能性も考えられ、その場合にも電話などで事前に医療機関へ相談したうえで受診することを検討しましょう。

新型コロナウイルス感染症が疑われる場合には、かかりつけ医や最寄りの保健所などに設置される「受診・相談センター」(地域により名称が異なることがあります)、または地域によっては、医師会や診療所等で相談を受け付けている場合もありますので、連絡しましょう。特に、次のいずれかに該当する方はすぐに相談しましょう。

新型コロナウイルス感染症と思われる強い症状がある場合

息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱などといった強い症状がある場合にはすぐに相談する必要があります。

新型コロナウイルス感染症が重症化しやすい人で、発熱やせきなど軽めの風邪の症状がある場合

ここでいう「重症化しやすい人」というのは、高齢者、糖尿病・心不全・呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患等)などの基礎疾患がある人、透析を受けている人、免疫抑制剤や抗がん剤などを使用されている人を指します。
また、妊娠中の方も念のため、上記の人と同様に早めの相談が必要です。

上記以外の人でも、発熱やせきなどの比較的軽い風邪の症状が続く場合

症状が4日以上続く場合には必ず相談しましょう。また、症状には個人差があるため、自分で強い症状だと思う場合にも相談が必要です。
加えて、解熱剤などを飲み続けていないと発熱がおさまらないという方も相談が必要です。

「受診・相談センター」の他にも、地域によっては医師会や診療所などで相談を受け付けている場合があります。窓口に相談すると、必要に応じて専門の外来を紹介してもらえるので、感染拡大に注意しながら受診してください。

新型コロナウイルス感染症とインフルエンザのワクチン

新型コロナウイルス感染症とインフルエンザにはそれぞれワクチンがあります。かかりつけの病院があれば相談すると良いでしょう。なければ、お住まいの自治体に相談窓口を設けていることが多いので、確認してみてください。
また、新型コロナウイルスワクチンについては、ワクチン接種の総合案内「コロナワクチンナビ(https://v-sys.mhlw.go.jp/)」があり、接種会場やどのように接種を受けるかなどの情報が提供されていますので、参考にすると良いでしょう。

新型コロナウイルス感染症の感染予防・拡大防止のためには、一人一人のエチケット(マスク着用やせきエチケットなど)や慎重な行動が不可欠となります。風邪やインフルエンザと新型コロナウイルス感染症の違いを理解したうえで、厚生労働省や各都道府県からのお知らせをこまめに確認し、「もしかして」と感じられた場合には国や自治体が設ける相談窓口へ相談するようにしましょう。

厚生労働省のホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19-kikokusyasessyokusya.html
には国や各都道府県からのお知らせと電話相談窓口の一覧がまとめられていますので、活用してみてください。

参考

厚生労働省ホームページ「新型コロナウイルス感染症について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

新型コロナウイルス感染症COVID-19 診療の手引き 第10版
https://www.mhlw.go.jp/content/001136687.pdf

新型コロナウイルス感染症外来診療ガイド 第2版(日本医師会)
http://dl.med.or.jp/dl-med/kansen/novel_corona/shinryoguide_ver2.pdf

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株 EG.5.1 系統について 2023年9月7日時点(国立感染症研究所)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001144316.pdf

新型コロナウイルス感染症COVID-19 診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント 第2版
https://www.mhlw.go.jp/content/000952747.pdf