生活習慣病とは?定義・種類・原因・症状・予防法などをわかりやすく解説|健康サイト

生活習慣病とは?定義・種類・原因・症状・予防法などをわかりやすく解説

生活習慣病とは「健康的とはいえない生活習慣」が関係している病気の総称です。食事や運動、休養、喫煙、飲酒といった生活習慣が深く関与し、それらが発症の要因となっています。
ここでは生活習慣病に含まれる病気の種類や発症の原因、主な症状、予防法などを、専門医の解説とともに学んでいきましょう。
田中 清 先生

監修

田中 清 先生 (静岡県立総合病院リサーチサポートセンター 臨床研究部長、日本ビタミン学会 理事)

生活習慣病とは?

生活習慣病とは、食事、運動、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が発症の主な原因となっている病気の総称です。
以前は「成人病」と呼ばれていましたが、成人でなくても発症する可能性があるため、1990年代後半頃から「生活習慣病」という名前が使用されるようになりました。
発病してもかなり進行するまで自覚症状が現れないことが多く、知らないうちにダメージが蓄積され、やがて心筋梗塞や狭心症、脳梗塞、脳出血などの深刻な病気を引き起こすことがあります。

生活習慣病の定義

現状、生活習慣病に含まれる病気とされているのは、がん、脳血管疾患、心疾患、さらにそれらの危険因子となる動脈硬化症、糖尿病、高血圧症、脂質異常症です。
ただし、はっきりとした定義があるわけではありません。他には骨粗しょう症、ロコモティブシンドローム※1、サルコペニア※2、フレイル※3、睡眠障害なども発症に生活習慣が関係していることから、生活習慣病に含まれることがあります。

近年では、こうした予防可能な病気への対策の重要性が、国際的にも注目されています。世界保健機関(WHO)によって提唱された「NCDs(Noncommunicable diseases=非感染性疾患)」という生活習慣病に似た概念には、心臓病や脳卒中などの循環器疾患、がん、糖尿病、そして慢性閉塞性肺疾患(COPD)が含まれています。

※1
ロコモティブシンドローム(運動器症候群):筋肉や骨、関節、椎間板といった運動器の障害のために立ったり歩いたりするための身体能力(移動機能)が低下した状態
※2
サルコペニア:加齢による筋肉の減少にともなって運動能力が低下した状態
※3
フレイル:加齢により心身が老い衰えた、健康と要介護の間の虚弱な状態

主な生活習慣病の種類一覧

生活習慣病は定義がはっきりしていないため、「五大生活習慣病」(例:がん、糖尿病、心疾患、高血圧性疾患、脳血管疾患)や、「八大生活習慣病」(例:五大生活習慣病に加え、腎疾患、肝疾患、膵疾患)というように、その時々で含まれる病気が異なることもあります。ここでは、生活習慣病に分類される主な病気を順に解説していきます。

がん

がんのなかでも大腸がんと肺がんは、生活習慣との関連が大きいことが知られています。大腸がんは、遺伝の場合を除いて食習慣との関連が明らかになっており、肺がんは、喫煙という生活習慣が最大の原因です。
WHOが提唱する生活習慣病のような概念=NCDsでも、がんの発症には喫煙、食生活、運動不足、飲酒といった生活習慣が関係するとされています。

糖尿病

糖尿病は、「インスリン」というホルモンの不足や働きが悪くなることによって、血糖値の上昇を抑える働き(耐糖能)が低下し、高血糖の状態が続く病気です。目や腎臓、神経などに影響が出る他、心臓病や脳卒中が発症するリスクが高まり、命に危険が及ぶこともあります。

肥満

肥満とは、単に体重が重いだけではなく、体脂肪が過剰に蓄積した状態のことです。肥満だけでは病気といえないことも多いですが、多くの病気を引き起こす原因になっています。
脂肪が多い場所によっても健康への危険性が大きく異なり、特に腹部に脂肪が蓄積する「内臓脂肪型肥満」はリスクが高いといわれています。

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脂質異常症(高脂血症)

脂質異常症とは、血液中の悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪が多すぎる、もしくは善玉(HDL)コレステロールが少なすぎるなど、脂質が異常な状態にある病気です。動脈硬化と関連があり、ある日突然、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などの血管障害を発症させることがあるなど、注意が必要です。
内臓脂肪型肥満になると、脂質異常症になりやすい傾向があることがわかっています。

高血圧症

高血圧とは血圧が高い状態のことですが、たまたま測った血圧が高かっただけでは「高血圧症」とはいい切れません。何度くり返し測っても血圧が基準より高い場合、高血圧症という病気と診断されます。
高血圧が続くと動脈硬化を引き起こしやすくなる他、脳出血や脳梗塞、大動脈瘤、腎硬化症、心筋梗塞、狭心症、眼底出血などの原因にもなります。

脳卒中

脳卒中は、脳血管障害とも呼ばれます。脳梗塞、脳出血、くも膜下出血という3つの病気の総称で、いずれも高血圧が最大の原因です。
高血圧が長く続くと、動脈硬化が進行します。すると、やがて脳の血管が詰まって脳梗塞になったり、脳の血管が破れて脳出血になったり、脳の血管の一部分に動脈瘤ができて破裂し、くも膜下出血になったりすることがあります。

心筋梗塞

心疾患は日本人の死因の第2位と重要な疾患です。そのなかでも心筋梗塞は、循環器の要といえる心臓の血管が何らかの原因で詰まり、血液の流れが止まって細胞が死んでしまう箇所(梗塞)が生じる病気です。無事に回復しても、心不全や不整脈などの後遺症をもたらすこともあります。

慢性気管支炎

気管や気管支が長期間にわたって炎症を起こし、咳やたんが続くのが特徴です。喫煙や受動喫煙が主な原因で、粘り気の強いたんが詰まるなどして気道が狭くなり、息を吐きづらくなることもあります。なお、最近では慢性気管支炎などの肺の炎症性疾患を総称し、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と呼ぶこともあります。

※タバコから出る煙(副流煙)と喫煙者が吐き出した煙(呼出煙)が混ざった煙を吸わされてしまう、もしくは吸わせてしまうこと。喫煙者自身が吸い込む主流煙より、タバコから出る副流煙の方が、有害物質が多いといわれています。

肝硬変

肝硬変とは、B型・C型肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養、自己免疫などにより起こった慢性肝疾患によって、肝臓内に線維組織が増え、肝臓が硬くなってしまう病気です。

脂肪肝

肝臓には、体内で余ったエネルギーが中性脂肪につくり替えられて貯蔵されます。適量ならば問題ないのですが、肝細胞の30%以上に中性脂肪がたまると「脂肪肝」と診断されます。多くはメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)を合併しています。
原因のほとんどは食べ過ぎや飲み過ぎ(多量の飲酒)ですが、糖尿病やステロイド剤の服用などによる代謝異常が影響していることもあります。自覚症状はほとんどなく、放っておくと肝炎や肝硬変になるため、注意が必要です。近年では、アルコールではなく過食が原因で脂肪肝から肝炎・肝硬変となる「NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)」が増加していることが問題視されています。

歯周病

口のなかに生じる感染症の一種です。細菌の感染によって歯の周りの歯ぐき(歯肉)や、歯を支える骨などが溶けてしまうといった症状が生じます。近年では、歯周病を中心とした口腔内の病気が心血管系疾患、糖尿病、肺炎などの生活習慣病を始めとする全身に関わる病気に影響を与えるという報告が増えていて、注目が集まっています。また高齢者においては、歯の喪失の最も重要な原因とされています。「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という「8020運動」にも関わってくる病気です。

【プチメモ】メタボリックシンドローム

メタボリックシンドローム(メタボ)は、糖尿病をはじめとした生活習慣病になる一歩手前の状態といえます。ただ太っているのではなく、内臓に脂肪が蓄積している内臓肥満が特徴です。
糖尿病や心臓・血管の病気を引き起こしやすい状態になっていて、メタボの人はそうでない人と比べて、2型糖尿病になるリスクや、心血管疾患を起こし、それにより死亡するリスクが約3倍になるというデータがあります。
日本では、ウエスト周囲径(おへその高さの腹囲)が男性85cm・女性90cm以上で、かつ血圧・血糖・脂質の3つのうち2つ以上が基準値から外れると、「メタボリックシンドローム」と診断されます。

体に影響が現れていなくても、決して放置して良い状態ではないため、適切な運動や食事療法による体重、血圧、血中脂質、血糖値の管理を行う必要があります。特に体重は5~10%の減少、つまり体重80kgの人が4kg程度体重を減らしただけでも、メタボにともなう高血圧、脂質異常、高血糖の改善につながるため、体重の減量は有効な改善策のひとつといえます。
また、喫煙は動脈硬化を進行させ、心臓・血管の病気を起こしやすくするため、禁煙も重要です。

まずは、肥満のセルフチェックで自分の状態を確認してみましょう。

・肥満 セルフチェック
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生活習慣病の原因は?リスクを高める習慣

生活習慣病の発症原因には、食事やアルコール、喫煙などの生活習慣やストレスなどが大きく関わっています。なかには遺伝など生活習慣以外の要因の関与も少なくありませんが、具体的にどんな習慣がリスクを高めるのか確認しておきましょう。

ストレス

ストレスは、動脈硬化発症の引き金になることがわかっています。仕事や家事で忙しい人、多くのことに関わり時間に追われるように過ごしている人、常にてきぱきと動いている人は、ストレスの影響を受けやすいという報告も。特に日本でも海外でも、週のはじまりである月曜日には心筋梗塞の発症が多いため、日頃からストレスを抱えやすい人は注意しておきましょう。

喫煙(タバコ)

タバコの煙には約7,000種類の化学物質、約250種類の有害成分が含まれており、そのうちの70種類以上には発がん性が確認されています。日本では、年間12~13万人が喫煙により死亡している他、約1万5,000人が受動喫煙による肺がん、虚血性心疾患、脳卒中、乳幼児突然死症候群などで死亡していると推計されています。喫煙者本人だけでなく、家族や周囲の他者にまで大きな害を及ぼす可能性がある習慣です。

飲酒(アルコール)

飲酒は、さまざまな生活習慣病の発症と密接に関わっています。特に日本人は、アルコールの代謝物質であるアセトアルデヒドをすばやく分解する酵素を持たない人が多く、アルコールの影響を受けやすいといえます。
厚生労働省による「国民健康・栄養調査(令和元年)」では、男性の約6人に1人、女性の10人に1人が、生活習慣病のリスクを高める量を飲酒しているという結果が出ています。後ほど紹介する適正な飲酒量の範囲にとどめるよう心掛けましょう。

睡眠不足

睡眠不足になると休養不足となり、疲労が蓄積されて不調を招きやすくなります。睡眠不足が関連する代表的な病気としては、不安障害やうつ病などの精神疾患、ホルモン分泌の乱れによる肥満やメタボ、高血圧、糖尿病、そして自律神経の不調から免疫が低下することによる風邪などの感染症まで多岐にわたります。

食生活の乱れ

偏った食生活を続けていると、栄養のバランスが崩れ、病気を引き起こす原因となります。特に肥満、糖尿病、脂質異常症、脂肪肝などは、食事の内容が大きく影響しています。

運動不足

現代は、車社会やデスクワークが中心であることによる身体活動の不足や運動不足が起きやすく、肥満やメタボになりがちです。
意識して体を動かしていないと、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった病気を発症したり、ロコモティブシンドロームやサルコペニアなどが生じ、さらに運動不足になるという悪循環に陥ることもあり、注意が必要です。

生活習慣病の予防法は?

基本のポイントは「食事・運動・睡眠」

生活習慣病の予防には、まず「食事・運動・睡眠」という基本的な生活習慣を整えることが大切です。

食事

食事は栄養バランスを整えることが基本です。特に近年ではビタミンの摂取不足が色々な病気の発症リスクを高めることがわかっています。生活習慣病においては、ビタミン摂取不足が与える影響が非常に大きいといわれており、積極的なビタミン類の摂取が特に重要です。例えば、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12を適切に摂取すると、心筋梗塞のリスクが低下したという研究結果がある他、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKの積極的な摂取でがんや脳血管疾患、動脈硬化などの発症リスクが低下するという研究結果もあります。これらのビタミンを含む食品を多く摂取するよう心掛けましょう。
また、食物繊維や乳酸菌・酪酸菌を摂取するなどして腸内環境を整えることも有効です。肥満、糖尿病、大腸がん、動脈硬化症、炎症性腸疾患などの疾患の予防につながります。

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運動

身体活動量や運動量を増やすことは、肥満症、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの改善につながり、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、脳梗塞、一部のがんなどの発症予防になることも示唆されています。
ウォーキングなどの息が少し弾む程度の有酸素運動を30~60分、週3日以上実施すると良いでしょう。
日々の生活で椅子に座っている時間を減らし、こまめに動くようにすることも運動不足の解消につながります。

睡眠

日本人の5人に1人は慢性的な睡眠不足といわれています。しっかりと体を休めるには、6~8時間の睡眠が必要です。日中の活動量に応じた適正な睡眠時間を取るよう心掛けていきましょう。
近年は、自分で睡眠の時間や状態を計測できる機器も開発されています。こうした機器を利用して、睡眠が足りているかどうかをチェックしてみるのも良いでしょう。

気を付けるべきポイントは「飲酒・喫煙」

飲酒

望ましいとされるアルコールの摂取量は、1日20g(日本酒に換算して一合程度)までといわれています。日本人男性では、平均して2日で20g程度のアルコール量を摂取するくらいの人が、最も死亡率が低いとされている研究結果も出ています。 アルコールをたくさん飲める人でも、以下の表を参考に、1日の飲酒量をとどめておきましょう。飲酒時には、体内でアルコールを代謝するのに大量のビタミンB1が消費されるため、ビタミンB1を意識的に摂取すると良いでしょう。

<酒類摂取量換算の目安>

お酒の種類 アルコール度数 純アルコール量
ビール(中瓶1本 500ml) 5% 20g
清酒(1合 180ml) 15% 22g
ウイスキー・ブランデー
(ダブル 60ml)
43% 20g
焼酎(1合 180ml) 35% 50g
ワイン(1杯 120ml) 12% 12g

出典:『健康日本21(アルコール)』厚生労働省 

喫煙

喫煙習慣をやめることは、病気の予防において下記のように大きな効果があります。長年タバコを吸っていたとしても何歳であっても、禁煙するのに遅すぎることはありません。できるだけ早く、禁煙を目指しましょう。

<すべての喫煙者にもたらされる禁煙の効果(禁煙後すぐ、また長期的に現れる健康へのメリット)>

禁煙をしてからの経過時間 健康上の好ましい変化
20分以内 心拍数と血圧が低下する
12時間 血中一酸化炭素が低下し正常値になる
2-12週間 血液循環が改善し肺機能が高まる
1-9カ月 咳や息切れが減る
1年 冠動脈性心疾患のリスクが喫煙者の約半分に低下する
5年 禁煙後5-15年で脳卒中のリスクが非喫煙者と同じになる
10年 肺がんのリスクが喫煙者に比べて約半分に低下し、口腔、咽喉頭、食道、膀胱、子宮頸部、膵臓がんのリスクも低下する
15年 冠動脈性心疾患のリスクが非喫煙者と同じになる

出典:『禁煙による健康への効果』国立がん研究センターがん情報サービス

<全年齢層ですでに喫煙関連の健康問題が生じている人にもたらされるメリット>

禁煙の時期 喫煙を続けている人と比較したメリット
30歳頃 寿命が約10年長くなる
40歳頃 寿命が9年長くなる
50歳頃 寿命が6年長くなる
60歳頃 寿命が3年長くなる
生命に関わる疾患の発症後 心臓発作の発症後に禁煙すれば、次の心臓発作が起きる可能性を50%低下させるなど、迅速な効果がある

出典:『禁煙による健康への効果』国立がん研究センターがん情報サービス

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最後のポイントは「定期的な健康診断」

生活習慣病を発症させる要因は、毎日の生活のなかで、知らず知らずのうちに負担となり、体に影響を与えています。
定期的に健康診断を受けることは、そうした生活習慣病のリスクがどれくらいあるかを把握することにつながるといえます。定期的に受診し、必要に応じて精密検査を受けるなどして、生活習慣病を予防していきましょう。

生活習慣を見直して健康な毎日を過ごそう

生活習慣病の原因は、生活習慣だけが関係しているわけではありませんが、日々の習慣を少しずつ改善することで、生活習慣病の対策につながっていきます。
食事、運動、睡眠(休養)を基本に、できるだけ禁煙を心掛けたり、適切な飲酒量を維持するなど、ちょっとした改善の積み重ねが大切です。
その際、例えばバランスの良い食事は重要ですが、毎日食事に気を付けるのは難しいかもしれません。そのような場合は、足りない栄養を市販のビタミン剤やサプリメントで補ったり、腸内環境を整える整腸剤を活用するのも一手です。
無理のない範囲で少しずつ生活習慣を見直して、健康な毎日を過ごせるように意識していきましょう。

<参考>