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ノアザミ

キク科(生薬名:ケイ) Cirsium japonicum DC.(Asteraceae)

ノアザミ
ノアザミ

 北海道を除く日本各地の山野に普通に見られる多年草。草丈60~100cm。この仲間では最も早く花を開き、花の付け根の部分がねばねばする特徴を持ち、この点で他のアザミ類と区別する。日本では、秋に花が咲くヤマアザミを「大薊」、アレチアザミを「小薊」という傾向にある。
 アザミ類の根は生薬の「ケイ」と呼ばれ、利尿、解毒、止血、強壮薬として月経不順、子宮筋腫、鼻血、尿血、下血などに用いられる。また持続性の血圧降下作用物質が含まれていることも報告されている。日本では「和続断ワゾクダン」と呼ばれ、神経痛、利尿、健胃の民間薬にされる。
 成分として、ペンタデセン(1-pentadecene C15H30)、アプロタキセン(aplotaxene C17H28)、カプロン酸(caproicacid)、セスキテルペノイドのツヨプシン(thujopsene C15H24)、シペレン(cyperene)などを含む。
 アザミ類の種子は遠くに飛ばないため各種の分布は地域的に限られているが、種間雑種ができやすいので分類が難しいグループである。つまり、この仲間はすべて筒状の両性花ではあるが、雄性先熟性を有しており、自花受粉は行われない。その仕組みがなかなか巧妙で、雄しべがまず熟し、後から花柱が伸びるので、花柱の基部にある球状の短毛が花粉を外へはらい出す。昆虫が花に触れると、花糸が一本一本順に縮んで花粉を昆虫の体にすりつける。また昆虫が花に潜ろうとして動くと、葯筒の先から花粉がわき出て昆虫の体にくっつくのである。自分の花粉が無くなった後、花柱の先は熟して短く開き、他花の花粉を受けとるようになっている。ちなみに、開花時の春咲き種にはアゲハ、キアゲハ、モンシロチョウ、キチョウ、コアオハナムグラ、ハラナガツチバチなど、また秋咲き種にはイチモンジセセリ、キスジハラナガツチバチなど多くの昆虫が花粉媒介に訪れる。日本の春咲き種は本種だけであるが、それも高原では夏に咲く。
 本種は葉を食用とする。まずトゲを火にかざして焼き、軍手をして20分ほど揉んでアク出しをした後、適当な大きさに切り、鰹節と醤油をかければ美味しい一品の出来上がり。
 古来「アザミの花も一盛り」という諺があり、地味でも盛りにはそれ相応に美しくなることのたとえに使われる。西洋では聖母マリアが十字架から引き抜いた釘を埋めた場所から生じたというので、キリスト教の聖花(Thistle)とされる。また10世紀半ば、デーン人(デンマーク)の攻撃を受けたスコットランドでは、敵の斥候が素足で踏みつけて悲鳴を発したために奇襲が発覚した逸話があり、以来スコットランドでは王家の紋章とされ、国花となった。そのため今もガーター勲章に次ぐアザミ勲章が存在する由。

解説:渡辺 斉(京都薬用植物園 園長) 撮影場所:京都薬用植物園

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