【医師監修】痛くない便秘薬ってあるの?自分にあった市販薬の選び方

新型コロナウイルスを契機に生活様式が変わる中、便秘に悩む方も多いのではないでしょうか。食事、運動、睡眠などに気を付けても便秘が改善しない場合には薬をうまく活用したいところですが、便秘薬である下剤は「おなかが痛くなりそう」「服用後にいつ便意がくるのか分からないから困る」「効きすぎて下痢になったらどうしよう」などの不安から服用を躊躇するケースもあるでしょう。そこで、ここでは便秘の原因や便秘を改善する薬の種類、使い方などを紹介したいと思います。


監修 : 東海大学医学部専門診療学系漢方医学教授 新井 信 先生


そもそも便秘ってどういう状態?

1便秘とは?

便秘とは「出すべきものを十分に、快適に排便できていない状態」のことをいいます。排便回数が少なくなることで、腹痛を生じる、おなかが張った感じがする、排便に時間がかかる、強くいきまなければならない、便が出てもすっきりしないなどの症状が生じます。食事や運動などの生活習慣と関係しており、便秘の人は睡眠の質が良くないといわれています。

便秘の原因と種類

1大腸と排便の仕組み

私たちが食べた物は、口の中でかみ砕かれた後、食道を通り胃に送られます。胃ではぜん動運動(筋肉が伸び縮みをくり返して、内容物を送り出す動き)や胃酸によって消化しやすい形状になります。そして、小腸の入り口で消化液と混ざり合い、小腸を通る間に栄養素が吸収され、大腸で水分などが吸収されます。

胃の内容物が小腸から大腸へ移動すると、大腸には強いぜん動運動が起こり、便が直腸へ押し出され便意が起こります。ところが、大腸の運動が低下し便が大腸内を通過するのに時間がかかると、水分が通常よりも多く吸収されて便が硬く小さくなり、快適に排便できない不快な症状が生じます。この大腸における停留時間の延長は、便秘の大きな原因の一つとなります。
原因としては、生活習慣(ダイエットによる食事量や水分の制限、食物繊維※の摂取不足、運動不足など)や加齢(腹筋力の低下など)、ストレスなどがあげられます。

※食物繊維は便のカサを増やしたり、腸の壁を刺激してぜん動運動を促したり、便に水分を呼び込み軟らかくしたりします。

2主に生活習慣が関わる便秘の種類

主に生活習慣が関わる便秘は次の4つのタイプに分けられます。
※本稿で取り上げた便秘の分類は『慢性便秘症診断ガイドライン2017』とは異なっています。

1)食事性便秘
食事の量や、食べ物に含まれる食物繊維の量が少ないと便の量が減って排便回数が少なくなります。すると、大腸内での滞留時間が長くなり、水分が多く吸収されて便が硬くなります。

2)習慣性便秘
トイレを我慢することが習慣になると、直腸の感受性が弱くなり便意が起こりにくくなります。

3)弛緩性(しかんせい)便秘
大腸のぜん動運動が低下し、便が大腸内に滞留する時間が長くなり、水分が多く吸収されて便が硬くなります。筋力低下、運動不足、水分不足、極端なダイエットなどが引き金となることがあります。

4)けいれん性便秘
大腸の働きを調節する自律神経のバランスがくずれることから起こります。強い腹痛が生じたり、丸く小さな硬い便が出たりするのが特徴です。

便秘薬の種類~「刺激性」と「非刺激性」~

便秘薬は、腸の運動を促進するタイプ(刺激性)と便を軟らかくするタイプ(非刺激性)の主に2種類に分けられます。

1腸の動きを活発にする「刺激性の便秘薬」

刺激性の便秘薬は大腸を刺激し、ぜん動運動を高めることで排便を促します。主な成分としてはビサコジルなどがあり、一般的に作用が強く、長期間のみ続けると効果が徐々に弱くなり、便秘が悪化することがあるため注意が必要です。

市販の刺激性便秘薬
・腸を刺激する作用の便秘薬成分(刺激性下剤)

ビサコジル、ピコスルファートナトリウム、センナ、アロエ、ダイオウ、センノシドなど

2便の柔らかさや水分量をふやす「非刺激性の便秘薬」

非刺激性の便秘薬には浸透圧性下剤や膨張性下剤があります。浸透圧性下剤には塩類下剤(酸化マグネシウムなど)と浸潤性下剤(ジオクチルソジウムスルホサクシネート:DSS)があり、これらは腸内や便の水分量を増やして排便回数を増やします。浸透圧性下剤は効果があらわれるまで数日かかります。膨張性下剤(プランタゴ・オバタ)は薬に入っている成分が水を吸収し膨張することで便の量が増えて排便を促します。

市販の非刺激性の便秘薬
・水分を腸内によびこむことで、便を柔らかくする作用の便秘薬成分(浸透圧性下剤 塩類下剤)

酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム

便に水分を浸透しやすくする作用の便秘薬成分(浸透圧性下剤 浸潤性下剤)
ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)

成分自体が腸管内で水分を吸収して膨らみ、便のカサを増すとともに柔らかくする作用の便秘薬成分(膨張性下剤)
プランタゴ・オバタ

便秘薬の注意点

1腹痛を避けるための便秘薬服用方法

刺激性の便秘薬には長い期間のみ続けると効果が弱くなり、便秘をさらに悪化させるものもあります。また、副作用として腹痛や下痢があらわれることもあります。非刺激性の便秘薬でも、頻度は低いものの腹痛や下痢などがあらわれることがあります。
効果を十分発揮させるには多めの水分で服用することが望ましく、体質や便秘の症状に合わせて便秘薬を選ぶことが重要です。なお、便秘の原因はさまざまで、ときには大腸癌で通過障害を起こしていることもあります。用法用量を守って便秘薬を飲んでも便秘が改善しない場合は、服用を中止し必ず医療機関を受診しましょう。

気持ちの良いお通じ(快便)におすすめの漢方便秘薬

1漢方便秘薬とは

便秘の治療薬には漢方薬もたくさんあります。漢方による便秘治療は、西洋医学(西洋薬)とは考え方が異なります。

便秘治療を乗馬に例えると西洋薬は鞭にあたり、どんな馬でも鞭を打って走らせ、とにかく便を出すことをゴールとしています。これに対し漢方薬は、同じゴールを目指すにしても馬の状態も考慮します。弱ったり痩せたりしていれば、水やエサを与えるなどして気持ちよく走らせるようにします。

つまり、弱った大腸には“水やエサ”を与えたり少し休ませたりしながら体のバランスを整える―――これが漢方の考え方です。

「大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)」には大黄と甘草という2種類の生薬が入っています。大黄の主要成分であるセンノシドは刺激性の便秘薬で、排便を促す働きがあるので、鞭に相当します。甘草にはおなかの痛みを和らげる働きがあるので、水やエサに当たると考えるとよいでしょう。大黄で排便を促しながら、甘草を配合することで刺激性下剤である大黄(センノシド)の副作用を緩和する絶妙なコンビネーションで構成されているのです。

その他、大黄に加え便を柔らかくする芒硝(ぼうしょう)が含まれる「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」や、腸を潤す作用がある麻子仁(ましにん)が含まれる「麻子仁丸(ましにんがん) 」や「潤腸湯(じゅんちょうとう)」などの漢方薬があります。

2排便のタイミングを予測できる便秘薬をうまく使って

「便秘薬の服用は、いつお通じがくるか不安」、「腹痛がこわくて予定の無い日にしか服用できない」と服用を躊躇するケースがあるかもしれません。しかし、便秘薬服用後どのくらいで排便されるかのタイミングがわかれば、生活のペースが乱されず便秘解消につながる可能性もあります。例えば、「大黄甘草湯」は就寝前に服用すると、約8~10時間後の翌朝にお通じが得られます。効果には個人差がありますが、このような目安値を参考にしながら、便秘薬を上手に使うとよいでしょう。

便秘薬についてのまとめ

1便秘解消のために心掛ける事

基本的には、食事・運動・睡眠の習慣を改めることが大切です。水分摂取や十分な食事量、食物繊維の積極的な摂取、適度な運動や睡眠などの基本的な生活習慣を心がけましょう。それでも改善しない場合には、便秘薬を上手に使うのも一つの方法です。
便秘薬を刺激性と非刺激性だけで判断するのではなく、自然に近い気持ちのよいお通じを促す漢方薬や、排便のタイミングを予測できる便秘薬、また漢方の考え方で痛みを緩和する働きのある生薬などを配合した漢方薬などがあるので、それぞれの特徴を知り、それぞれのニーズに合わせた便秘薬を選ぶことが大切です。自分に合った便秘薬を選び、便秘解消につなげましょう。



※画像はイメージです


■参考文献
日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会 編集, 慢性便秘症診療ガイドライン 2017, 南江堂, 2017
中島恵美 監修, 今日のOTC薬-解説と便覧-(改訂第4版), 南江堂, 2018
漢方294処方 生薬解説 , じほう, 2016

プチメモ――

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