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エゴマ

シソ科(生薬名:白蘇葉ハクソヨウ荏油エノユ) Perilla frutescens Brit. var. japonica Hara(Lamiaceae)

エゴマ
エゴマ

 東南アジア原産の一年草で、日本各地で栽培あるいは帰化植物となっている。
 栽培の歴史は古く、縄文時代の遺跡から種子が見出されている。奈良時代以降は各地で栽培され、鎌倉末期から室町時代には京都の油商人の組織・大山崎油座が関西一円で独占販売権を持ち繁栄した。近世は江戸界隈で多く作られ、「荏原」「荏田」などの地名は荏胡麻エゴマに由来する。
 一種不快な臭気があり、高さ60〜90cm。茎は四角形で、分枝する。葉は対生タイセイして有柄、卵円形で辺縁に鋸歯キョシがあり、裏面はしばしば淡紫色を帯びる。8~9月頃、長く伸びた1本の花軸に複数の花柄が間隔をあけてつき、白色の小花を開く。
 夏~秋に葉を採集して陰干しにしたものが「白蘇葉ハクソヨウ」で、感冒による寒気、咳、下痢などに効果があるものの日本ではほとんど利用されない。最近では、韓国料理で焼肉を包む食材として生の葉が用いられている。また種子から搾った「荏油エノユ蘇子油ソシユ」は乾性油(空気中で徐々に酸化されて固まる油)で、多くは灯用とされたが、防水性があるため合羽、番傘、油紙、提灯の塗料にも使われた。またペイント、リノリウム(建材の一つ)、印刷用インクなどの原料としても重要である。菜種油の出現により需要は激減したが、安価のため庶民の間では食用としても利用された。種子を軽く炒ってゴマのようにり、醤油・味噌・砂糖を加えて野菜や肉の調味に用いる。東北地方ではこのタレが故郷の味にもなっている。
 種子は脂肪油約40%を含み、主としてオレイン酸(oleicacid C18 H34 02)、リノレン酸(linolenic acid C18 H30 02)などの不飽和脂肪酸からなり、少量のパルミチン酸を含む。全草中には通例ペリラケトン(Perilla ketone C10 H14 02)を主成分とする精油を含むが、成分変種が多く、主成分としてエゴマケトンやナギナタケトンなどを含むものも知られている。
 エゴマの種子から採れる油は、一般的には“シソ油”として市販されている。エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などを生成するα-リノレン酸(n-3系脂肪酸)の含有率が60%以上と非常に高く、発ガン抑制やアレルギー体質の改善などに有効であることが臨床的にも証明されつつあり、生活習慣病予防として料理用にもっと多く利用したいものの一つである。

解説:尾崎 和男(京都薬用植物園) 撮影場所:京都薬用植物園

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