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ラッキョウ

(ユリ科/生薬名:薤白ガイハク) Allium chinense G.Don(Liliaceae)

ラッキョウ
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 中国原産で、現在も揚子江流域に多い。古くから栽培されていたらしく、すでに『山海経センガイキョウ』や『名医別録』(500年頃)にも記載が見られる。日本に渡来したのはいつの頃か明らかではないが、江戸時代には栽培されていた。和名は、中国名「辣韮ラッキュウ」から転訛テンカしたもので、「辛辣な味を持つニラ」という意味である。
 本種の鱗茎リンケイ(ユリ根のように葉の変形したもの)をそのまま、または湯通しして乾燥したものが「薤白ガイハク」で、胸痛を去り、また去痰作用などがあり、栝蔞薤白半夏湯カロウガイハクハンゲトウなどに配合されて心臓性喘息や狭心症などの呼吸困難に応用する。味は辛く、薬性は温。
 ビタミンB1の吸収を助ける硫化アリルが豊富に含まれ、その中のアリイン(alliin C6H11NO3S)が酵素によりアリシン(allicin C6H10OS2)となり、それがビタミンB1と結合してアリチアミン(allithiamine C15H22N4O2S2)に変化し、ビタミンB1をより多く吸収する。ビタミンB1は疲労改善のビタミンである。また硫化アリルには強力な殺菌作用があり、サルモネラ菌、赤痢菌、チフス菌、コレラ菌、病原性のカビなどに有効である。アリインは血中脂肪の燃焼を盛んにし、コレステロール値の上昇を抑制する。また冠動脈に働いて血栓などを取り除き、新陳代謝を活発にする作用もある。さらに、比較的多く含まれるカリウムは、余分のナトリウムを体外に排出する働きがある。
 肥大した鱗茎を食用とする。成分として含まれる硫黄化合物には食欲増進、発汗、消炎、制菌などの作用がある。漬物としては酢に砂糖、あるいは蜜、醤油などを合わせて漬けることが多く、塩漬、粕漬、酢漬、味噌漬のほか、焼酎に氷砂糖を加えて浸けることもある。臭気があり、強精作用を有するため、仏教ではネギ、ニンニク、ニラ、ショウガとともに「五辛」の一つとして食べることを禁じている。
 葉は細長く中空で、冬も枯れない。晩秋に高さ30~40cmの花茎カケイを伸ばし、その頂端に薄紫紅色の花を咲かせるが、通常実は結ばない。初秋の頃、鱗茎を植え付けると、翌春になって繁り、数個の新鱗茎ができ、6~7月に葉が衰えるので、普通この時期に掘り上げる。さらに1年後に収穫することもあるが、その場合は小粒で分球の多いものになり、その甘酢漬は「花ラッキョウ」と呼ばれる。
 近縁のヤマラッキョウ(A. thunbergii G.Don)は、各地の山野に自生し、地上部が冬に枯死している。鱗茎は堅くて、通常食用にしない。

解説:渡辺 斉(京都薬用植物園 園長) 撮影場所:京都薬用植物園

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