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トチバニンジン

ウコギ科(生薬名:竹節人参チクセツニンジン、Araliaceae 局P. japonicus C.A.Meyer) Panax pseudoginseng Wall. var. japonicus Hoo et Tseng

トチバニンジン
トチバニンジン

 日本全域の山地の樹林下に自生する多年性草本で、通常は年1回しか萌芽しない。葉は掌状複葉で、3~7枚の小葉からなり、長い葉柄に3~5本が輪生する。その形状は同属のオタネニンジン(人参)に近似していて区別しにくいが、小葉の縁の鋸歯キョシがそれに比べてやや大きく目立っている。和名の由来は樹木のトチノキの葉に似ていることによる。また、オタネニンジンの花茎は、通常一本が直立するが、本種は途中から枝分かれするものが多く、その先端に花火のような多数の花柄を出すウコギ科独特の散形花序を形成する。花は淡黄緑色で6~7月頃に開き、果実は8~9月頃に赤く熟すが、地域によって果実の先端部が黒くなるものが見られる。
 根茎は地中を横に長く伸び、それらには結節があり、各節の上面には茎を付けていた跡が残っている。その数を計測することで株の年齢が推定される。なお、根茎の形状が竹の節のようになっていることから「竹節人参」、「竹参」などとも呼ばれる。野生の開花株は小さいものでも10年以上を経過しており、自然状態での生育は極めて遅いことがわかる。
 生薬「竹節人参」は本種の根茎を通例、湯通ししたもので、味はわずかに苦く、解熱、去痰、鎮咳、健胃作用などが認められている。漢方的には実用漢方処方集に出典が見られる「柴葛湯加川芎辛夷サイカツトウカセンキュウシンイ」に配合されており、慢性鼻炎、副鼻腔炎などの症状があり、胸脇苦満を伴う時に処方される。その他、みぞおちがつかえ、動悸、息切れなどの症状に処方される「木防已湯モクボウイトウ」の人参の代用品として用いられる。成分としてはチクセツサポニン(chikusetsu saponin) Ⅴ、Ⅳ、Ⅰbなどが含まれる。
 「薬用の人参」の代わりに、薬として用いられるようになったのは、江戸初期の寛永年間(1624~1645)であり、中国人の何欽吉カキンキツが日本に帰化して定住した薩摩領内(鹿児島)において、自生するトチバニンジンの根茎を発見・採集して使用したのが始まりとされている。この地域のトチバニンジン は、特に薩摩人参サツマニンジンと呼ばれ、形態的には変わらない。なお、「本草綱目拾遺ホンゾウコウモクシュウイ」(1765年)には、「東洋参」と称する日本産の人参(竹節人参らしきもの)が初めて登場する。

解説:尾崎 和男(京都薬用植物園) 撮影場所:京都薬用植物園

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