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オニバス

スイレン科(生薬名:芡実ケンジツ) Euryale ferox Salisb. (Nymphaeaceae)

オニバス
オニバス

 日本(本州、四国、九州)、朝鮮半島、中国、台湾などに分布し、湖沼に自生する浮葉性の一年草で、Euryale属(オニバス属)には本種のみである。水面に浮かぶ葉の大きさは、直径1m強で、わが国に自生する一年草としては最大である。葉の表裏を含め葉柄ヨウヘイ(葉と茎をつなぐ部分)にも鋭い棘があり、葉の裏面は鮮やかな深青紫色を呈する。葉の形は成長とともに変化し、発芽した第1の葉は針状に、幼葉はほこ形、成葉では円形の葉身となる。開花は8~9月に見られ、通常は水中で小さな蕾のうちに、花びらを開かずに自家受粉する閉鎖花であり、水面上に出て昼に赤紫色の花を咲かせた後に水中に沈む開放花も時々見られる。果実は直径約10cmで、硬い棘におおわれ、中に黒色で球形の種子を多数つける。和名のオニバス(鬼蓮)は、ハスに似ていて棘があることに由来し、別名のミズブキも葉がフキに似ているので名づけられたようである。
 成熟した果実の外果皮を除いて乾燥した種子を「芡実ケンジツ」と称し、『神農本草経シンノウホンゾウキョウ』の上品ジョウホンに収載されている。滋養・強壮、鎮痛作用があり、痛風、腰や膝の関節痛、尿失禁などに用いられる。味は甘渋く、薬性は平で、餅などにき込んで食用にもされる。種子は多量のデンプン、カタロース(catalose)の他、蛋白質、脂肪、カルシウム、鉄分、リン、ビタミンB2、ビタミンCなどを含む。
 日当たりの良い池や湖沼など貯水が十分で、水底に柔らかい汚泥のあるような場所が生育の適地である。完熟種子は周囲を薄い膜状組織の種衣に覆われており、その隙間にある空気層が浮き袋の役割となって、一旦水面に浮かび水流により浮遊する。その後、膜状組織が破れて水底に落下する仕組みになっており、通常4月末~5月上旬頃に発芽する。近年は、湖沼の水質汚染などを含む環境変化の影響から、本植物を見る機会が減少しており、絶滅の危険が増大している植物として環境省が絶滅危惧Ⅱ類(VU:Vulnerable[危急])に指定している。当園では本種の保全に向けた発芽条件などの解明に取り組んでいる。
 なお、本種の種子にはハスと同様に休眠性が見られ、翌年に一斉に発芽しないで、数年にわたり順次発芽するようである。これはイネ科の野生種に見られる現象で、発芽の不均一性により絶滅の危険性を回避する働きと考えられる。
 近縁ではあるが、別属のオオオニバス(Victoria regia Lindl.)は、南米のアマゾン地方に分布し、葉の直径が2mに達して縁は直角にめくれ上がり、たらい状に水面に浮かぶ世界一巨大な葉をつける被子植物として知られる。直径30cmほどの白色の芳香のある花を夜に咲かせる。

解説:尾崎 和男(京都薬用植物園) 撮影場所:京都薬用植物園

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