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夏の疲労対策は、食事の栄養バランスから

夏の疲労対策は、食事の栄養バランスから

〈話し手〉 本田 佳子 Keiko Honda(女子栄養大学栄養学部 教授)

 日本人の食習慣は家族揃って食卓を囲んでいた時代から、個食の時代へと大きく変わりつつあります。食べ方だけでなく、食の質や栄養の摂り方も変化し、生活習慣病など健康状態に影響を及ぼしています。
 そこで、栄養の専門家として病院などでの栄養指導をされている本田佳子先生に、食習慣と日常の疲労感の関わり、夏本番を前に食事による疲労対策やビタミンなどを効果的に取り入れた栄養補給対策を紹介いただきます。

食事本来の役割とは

 近年、私たちの労働環境やライフスタイルは生活の時間軸が夜型にシフトしています。そのため1日3回の規則正しい食生活から、朝食を欠き、昼も短時間の軽食ですませ、夕食でようやくゆとりを持って食事を摂るという生活に変化しています。

 また、食事を摂る時間だけでなく食べる量にも偏りがある食習慣は、食事がもつ本来の役割からはかけ離れています。1日3回に分けて食事を摂ることで、体温や呼吸などを整えつつ24時間血中の糖や様々なミネラルの濃度をほぼ一定に保ち、継続的に細胞へ栄養を補給し生命活動を営むことが、本来の食事の役割なのです。
 一定した栄養の補給には消化管の働きが役に立っています。食べ物は口で咀嚼され、胃袋で一旦留められ、一定の速度で腸に送られます。腸ではゆっくりと時間をかけて消化吸収を行い、このようにして栄養は継続して供給されます。では、食事を一度にまとめて摂取するとどうなるでしょう。この場合、消化そのものに必要なエネルギーが少なくすむ代わり、大量のインスリンが分泌されてしまいます。インスリンとは、血糖値の上昇に合わせて分泌されるホルモンで、血中の糖を体に溜めるように代謝を促進することで血糖値を下げる働きがあります。しかし、インスリンの分泌量には限界があるため、限界を超えると糖は代謝されず腎臓より排泄され、尿に混じって体外に出てしまいます。こうした消化管の機能とインスリンの関係から、人は長い時間をかけて“1日3食”という習慣を獲得しました。しかし、近年は食習慣の変化がそれを乱しているため、栄養素の摂取効率が低下していることも、疲労感につながる要因の一つと考えられます。

栄養の偏りも疲労の原因に

 それに加えて、摂取している栄養の質も問題です。人も他の動物と同様、エネルギー源をまず確保しようとします。例えばおなかがすいていたら、甘いものから食べようとします。ビタミンからは食べませんし、栄養バランスを意識しないとたんぱく質も不足しがちです。エネルギー源を摂っていたとしても、エネルギー量に見合うビタミンを摂っていなければ、エネルギーの代謝が十分に行なわれず、疲労感につながります。特にビタミンB群はエネルギー代謝に関わるので、十分摂る必要があります。また若い女性にはダイエットによる栄養不足もみられ、持続的にダイエットをしていると、朝起きる時にだるいといった様子が見受けられます。
 そして、食品そのものの栄養価が変化していることも、栄養摂取の状況に影響していると思われます。
 国内生産の野菜は多くの農家が露地栽培からハウス栽培へと移行し、旬の時期に旬のものを食べることが少なくなりました。

 栄養面でも、従来の野菜に比べて、含まれている栄養素の量が概して少なくなっています。例えばホウレンソウの本来の品種は背が低く、軸が太いものなのですが、それが栽培しやすく、調理しやすく、土地面積当たりの生産性の高い品種にとって変わりました。その結果、本来の品種と比べて、一部の栄養素は含有量が半分程度に減っています。
 品種改良された野菜はアクも少なくなっていますが、ミネラルも少なくなってきています。ゼンマイ、ワラビ、フキノトウのような和野菜はミネラルが豊富ですからアクが強いという特徴があります。昔の日本人は冬の間の野菜不足を補うため、春先に出てきたこれらの山菜や木の芽などでミネラルを補っていました。しかし、そういった食習慣や日本人の好みも変わり、ミネラル豊富な野菜の摂取を嗜好しなくなってきています。
 2008年4月からメタボリックシンドロームに着目した特定保健指導が開始され、生活指導の一貫として食事指導が行われ、肥満者の増加が抑制されつつあります。
 肥満は、改善せずそのまま放置しておくと様々な健康障害が起こります。特に、糖尿病や脂質異常症を発症します。これらの方々の食事状況をチェックすると、体重当たりの摂取エネルギーが高い人ほど、野菜の摂取量が少ないという共通点が見られます。
 また、肥満が原因による脂肪肝では肝臓の機能が低下し、それが疲労感の要因になることがあります。肝臓はビタミンの宝庫で、疲れを感じると人はまず肝臓で蓄えられているビタミンから消費します。しかし肝臓の機能の低下により栄養の貯蔵と合成が低下し、必要な栄養が補給されにくくなります。まずは肥満を解消することで肝臓の機能の回復をはかり、さらに食事と一緒にビタミンを十分に摂るという、栄養の補給が大切です。

食事することの意義

 日頃疲労を感じている人は、栄養のバランスのとれた食事やビタミン類を補給することが大切ですが、食事で不十分なときにはビタミン剤を用いることが勧められます。ビタミンの作用を考えると単独栄養素より、マルチビタミンのほうが効率的です。
 食事を摂るということは単なる栄養補給ではなく、体内の時間軸を正しくする意味もあります。例えば海外旅行の際、飛行機のなかで一定の間隔で食事を摂りますが、これは時差ボケを調整する役割があります。また、日頃何らかの薬をのんでいる場合は、食事をきちんと食べていないと薬も十分な効果が発揮されません。薬は「食前」「食後」「食間」とのむ時間を指定されているものが多くありますが、これは1日3回という規則正しい食事を前提に薬効時間の調整がかけられています。

「測る」「記録」で自己管理を

 では、食生活の乱れを改善させるポイントを考えてみましょう。
 臨床的に行なわれる栄養指導では、血液や尿などの検査の結果と日常の食生活から患者さん自身に食習慣の問題点を認識してもらい、食生活の改善に取り組んでもらいます。そして、疾患(病気)の治療にあわせた食生活に日常の食生活が変容するのがゴールです。この過程で、患者さんが血圧や体重、糖尿病の場合は血糖値を自己計測することはとても有効です。間違った食べ方をした時に、何がいけなかったのかがすぐわかります。また、食べる量を記録しておくことも有効です。何を食べたか、携帯電話にメモを保存しておくだけでも良いのです。飲酒される方はお酒の量だけ、あるいは宴席に行った回数だけでも記録しましょう。
 食事のコントロールがうまく行けば血糖値は約2ヵ月、中性脂肪値は1週間程度で下がってきますので、数値を見て自覚することが改善につながります。
 自分自身がどの程度なら食べたり飲んだりしてもいいのか適切な量を知り、食べ過ぎたり飲み過ぎた時、どのようにコントロールするのか自分で知ることが大切です。

夏ばて予防のために心がけたい食事

 夏は暑さの影響による疲れやだるさを訴える方が増える季節です。対策としては食事できちんと栄養を摂ることが勧められます。特に食事制限の必要な病気がない限り、エネルギー代謝に必要なビタミンB群とたんぱく質が不足しないよう十分にバランス良く摂ることが大切です。
 豚肉、豆類、雑穀は、ビタミンB群が豊富でたんぱく源にもなりますので、夏場には上手に取り入れたい食品です。

 豚肉なら冷しゃぶにして、そうめんにのせて一緒にいただけばおいしく栄養が摂れます。ビタミンB群は水溶性ですので、豚肉をゆでる前に片栗粉を軽くまぶして、ビタミンB群が流れ出さないようにします。
 特にたんぱく質は不足しがちですので、意識して摂るようにしたいものです。大豆製品の油揚げを食べたり、デザートに小豆などをいただくことでもたんぱく質が摂れます。食欲がなくて量を食べられない時は、たんぱく質、野菜、ごはんといった順で食べるようにしましょう。また、加工食品の多い食生活では、総じてビタミンやミネラルが不足しがちですので、主菜にゆでた野菜を添えたり、フレッシュジュースで補うのも良いと思います。
 さきほど紹介したそうめんも胡麻だれにして、シソの葉を加えるなどミネラルの多いものを混ぜていただくなど、いろいろな工夫が考えられます。

食事で栄養を補いきれない時には

 夏ばてや疲労の自覚がある方は“食事のサポート”として、食後にビタミン剤を利用していただくのも良いでしょう。ただし、ビタミン剤は食事代わりに服用するというのは間違った使い方ですし、単にたくさんの量をのんでも体内で吸収されずに尿から排出されてしまいます。医薬品には決められた使用法や、1日の量がありますので正しく活用しましょう。
 日本人の「食」はとても豊かになりました。おいしさは求めるのに、栄養の知識面ではまだまだ未熟だと思います。健康づくりの要である食習慣にも興味をもっていただきたいですね。

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