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笑って歩ける人生目指して、骨の健康を保ちましょう

笑って歩ける人生目指して、骨の健康を保ちましょう

〈話し手〉 萩野 浩 Hiroshi Hagino(鳥取大学医学部保健学科 教授/鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション部 部長)

 骨折により動けなくなったり、健康寿命を損なう大きな要因に骨粗鬆症があげられます。
 日本での骨粗鬆症の患者数は1,300万人と推計され、整形外科医として骨粗鬆症の診療にあたる萩野浩先生は、高齢者の骨折を「若者の骨折とは別ものの、“骨卒中*こつそっちゅう”とでも名付けるべき危険な疾患」と位置付けます。
 そして、骨折を予防するためには、高齢になってからの栄養摂取や運動ももちろん大事ですが、若いころからの「骨作り」が重要だと訴えられています。
 今回は、骨を健康に保つために理解しておきたい、骨の成り立ちや栄養素の役割、運動の意義について紹介します。

*卒中:本来的には、「突然起こる意識障害や神経麻痺などの中枢神経の機能障害」という意味がある。脳梗塞や脳出血の場合は脳卒中という。「骨卒中」とは、「骨に突然起こる重篤な障害」を意味する。

危険な高齢者の骨折「骨卒中」

 ひと口に骨折といっても、成長期の子供や20代、30代の若い人と、高齢者の骨折はまったく別ものです。若い人の骨折は治りが早く、治ればそれまでと同じように活動することができます。一方、高齢者の骨折は、股関節の骨(大腿骨近位部)を骨折した場合、3割ほどの人が寝たきりになるという調査結果が出ています1)。また、骨粗鬆症で一度骨折を起こすと、次々に骨折を繰り返すこともわかっており、股関節骨折はもう片方も骨折するリスクが4倍2)、椎骨、いわゆる背骨が一度折れると次の椎骨が折れるリスクは7倍あるといわれています3)
 骨粗鬆症は、骨量が病的に減少し、骨がスカスカになってしまう疾患です(図1図2)。骨粗鬆症の怖さは、痛みなどの自覚症状はほとんどないのに、知らない間に骨折を起こす可能性が高くなることにあります。
 骨折の危険性や骨粗鬆症の治療の必要性、予防の重要性の理解を促すために、私は高齢者の骨折を「骨卒中」と表現しています。

骨粗鬆症の年代別有病率

図1 骨粗鬆症の年代別有病率

(骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版)

正常な骨と骨粗鬆症の骨(イメージ)

図2 正常な骨と骨粗鬆症の骨(イメージ)

身体を支えるだけではない、骨の役割

 そもそも骨には、立って歩くために身体を支えるという重要な役割があります。
 同時に、身体がカルシウムを必要とした時に、カルシウムを補充するための貯蔵庫という重要な役割も担っています。たとえば海の動物はカルシウムを貯蔵する必要はありません。海水にはたくさんカルシウムが存在しているため、足りなくなったら海水を飲めばいいので、カルシウムを骨から血中に送り出す役割を担う副甲状腺という器官もありません。
 一方、海から地上に上がった動物は空気からカルシウムを補充することができません。ですが、脳や心臓などの生理機能を正常に保つためには、血液中のカルシウム濃度を常に一定に保つ必要があります。高すぎても低すぎても命に関わるため、不足したときには、副甲状腺ホルモンが働いて骨に蓄えられたカルシウムを溶かし補充されます(図3)。
 骨に貯蔵されているカルシウムが不足していたら、血液中のカルシウム濃度が下がったときに補給ができなくなってしまいます。また、身体を支えるために必要なカルシウムまで出て行ってしまうため、骨の強度が落ちて、骨折しやすくもなってしまいます。
 ただし、骨が成長している若い年代では、こうした問題が表面化することはほとんどありません。問題が現れるのは、骨量が減ってくる50歳以降です。
 だからこそ、若い時にしっかりとカルシウムをためて、丈夫な骨を育てておくことが重要です(コラム参照)。

血液中のカルシウム(Ca)濃度と骨の関係

図3 血液中のカルシウム(Ca)濃度と骨の関係

新陳代謝のバランスが崩れて骨粗鬆症に

 では、骨はどのようにして作られるのでしょうか。
 骨は身体のほかの組織と同様に、常に新陳代謝を繰り返しています。
 骨の新陳代謝は、古い骨を作り替えて新しくするという形で行われます。小さな亀裂が入ったところや年代的に古くなったところを、破骨細胞という骨を壊して吸収する働きをもった細胞が優先的に削り、続いて新しい骨を作る骨芽細胞が骨を形成していきます(図4)。
 健常なときは、骨を壊すスピードと骨を作るスピードのバランスがとれています。しかし加齢や閉経、運動不足などの影響により、骨を壊すスピードに対して、骨の形成が間に合わなくなることがあります。それが続くと徐々に骨量が減ってきて、骨粗鬆症といわれる状態になります。
 特に女性は閉経後エストロゲンが急激に減ると破骨細胞の働きが盛んになり、骨を作る骨芽細胞の働きが追いつかなくなります。女性の生涯において減少する骨量の約半分は、閉経後の10年の間に減少することがわかっています。

骨芽細胞と破骨細胞

図4 骨芽細胞と破骨細胞

健康な骨を育てる栄養と運動

 骨を育て、維持していくためには、栄養と運動が大切です。
 健康な骨を作るために必要な栄養素は、カルシウムとビタミンD、そしてビタミンB6です。
 骨は、カルシウムとリンが結びついたハイドロキシアパタイトという物質でできています。カルシウムは骨の材料として必要な栄養素ですが、多くの年代で食事からの摂取が不足している栄養素の1つでもあります。
 特に高齢者は、最低でも1日800mgのカルシウム摂取を必要としていますが、現在の平均摂取量は600mgくらいです。もともと加齢や閉経によりカルシウム不足になっているところに、さらに補給も足りないという状況では、ますます骨が弱くなってしまう可能性があります。
 カルシウムを摂取するには、吸収の良さという点から、乳製品がおすすめといえます。牛乳が苦手な方はほかの好きな乳製品で良いので、毎日とることをおすすめします。

過度な日焼け対策はビタミンD不足に

 カルシウムやリンの腸管からの吸収を高めるとともに、骨の材料となるリン酸カルシウムが骨に沈着するために必要な栄養素が、ビタミンDです(図5)。ビタミンDも、現在の日本人では非常に不足している栄養素です。
 ビタミンDを補うには、2つの方法があります。
 1つは、サケや干しシイタケなどビタミンDを多く含む食品を食べること。そしてもう1つは、日光に当たり、ビタミンDを皮膚で合成することです。
 昨今、過度な日焼け対策によるビタミンD不足が問題になっています。日焼け止めを塗っているだけでビタミンDの合成は阻害されます。1日に短時間でも良いので日光浴をすることが、骨の健康につながります。

カルシウム(Ca)と骨形成・骨吸収

図5 カルシウム(Ca)と骨形成・骨吸収

骨の「質」を高めるビタミンB6

 もう1つ、骨の健康に重要な役割をするのがビタミンB6です。
 骨は、カルシウムとリンの結晶であるハイドロキシアパタイトが、Ⅰ型コラーゲン*でできたネットワークに張り付いてできています。ビタミンB6はこのⅠ型コラーゲンの分子間架橋形成に関わり、骨強度を高め骨質を良くするために必要な栄養素です。
 高齢者の骨折のうち、70%ほどは骨密度低下が原因で起きていますが、骨密度が高くても骨折される方が30%ほどいます。その原因は、骨質、つまりコラーゲンの強度が弱いためではないかと考えられています。
 つまり、骨を強くするためには、骨密度を高めるだけでなく、骨の質も高める必要があるのです(図6)。そのために必要な栄養素が、ビタミンB6だというわけです。

*Ⅰ型コラーゲン:身体を構成するたんぱく質の一種。Ⅰ型コラーゲンは骨や腱、皮膚などに多く分布する。網目のようなコラーゲンにカルシウムが付着することで骨が形成される。

骨を鉄筋コンクリートに例えると

図6 骨を鉄筋コンクリートに例えると

運動は種目のバランスと継続

 健康な骨を作るためには、運動も大切です。
 骨は、一定の負荷をかけたほうが丈夫になります。成人では、運動によって骨密度が上がることはほとんどありませんが、骨密度を維持する一定の効果は認められています。
 丈夫な骨を作るためには、ジャンプやジョギングなどの荷重運動が良いといわれていますが、同時にウォーキングや水泳などの有酸素運動やヨガなどのストレッチ、スクワットなどレジスタンス運動(筋力増強運動)をバランス良く取り入れ、そして続けていくことが大切です。
 また、高齢者では、転倒防止のためのバランス運動を組み込むことも、骨折を防ぐうえで有用です。

転倒防止のためのバランス運動の例

折れる前に骨折予防を

 骨粗鬆症の治療は、骨が折れてからするのではなく、骨卒中を予防することが一番大事で簡単です。一度骨折すると、何度も繰り返したり、重い障害が残ることもあります。楽しい人生、いい人生を送るためには骨が折れないこと、体を動かせることがとても大事です。
 若い時は骨を丈夫にすることを、そして年齢を重ねてきたら今の骨量を減らさない努力をぜひ続けていただきたいと思います。
 高齢になっても、一人で歩いて笑って暮らせる、自立した人生を目指しましょう。

【参考文献】

1)Sakamoto K, et al. J Orthop Sci Mar;11(2):127-134,2006

2)Hagino H, et al. Calcif Tissue Int 90:14-21,2012

3)Fitzgerald G, et al. J Bone Miner Res 27(9): 1907-1915,2012

コラム

 何歳になっても、食事に気を付けたり運動を続けることは、骨の健康を保つうえでとても大切です。同時に、将来の骨の健康を考えると、成長期にしっかり骨を育てることが非常に重要になります。
 骨は成長とともに20代で人生最大の骨量となります。20代以降、骨はほとんど増えることはなく、減っていく一方です。ですから、高齢になった時にどれだけの骨量を維持できるかは、成長期から20代にいかに骨を育てるかにかかっているのです。

 骨が育つ10代、20代に過剰なダイエットをしたり、美白のためと称して過度な日焼け対策をしていると、将来、骨粗鬆症になって骨折する可能性が増大します。
 健康な骨作りは若い時から。ぜひ心掛けていただきたいと思います。

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