帯状疱疹(帯状ヘルペス)
  • 皮膚(全身) 皮膚(全身)

帯状疱疹(帯状ヘルペス)

子どものころに感染した水ぼうそうのウイルス(水痘帯状疱疹ウイルス)は、その後も神経節にひっそりと住みついています。このウイルスが体の抵抗力が低下したときに再び活性化することがあり、痛みをともなう赤い斑点や水ぶくれなどの発疹が神経の分布に沿って帯状にできる疾患です 。1997~2017年に宮崎県で行われた調査※によれば、年間で1000人あたり4〜5人程度に発症するといわれています。
(※IASR Vol. 39 p139-141: 2018)

宇井 千穂 先生

監修

宇井 千穂 先生 (やさしい美容皮膚科・皮フ科 秋葉原院 院長、やさしい美容株式会社 代表取締役)

帯状疱疹(帯状ヘルペス)の原因は過労・ストレス・加齢などによる免疫力の低下

体の抵抗力の低下

過労やストレス、加齢などによって抵抗力が低下すると、神経節内のウイルスが再活性化し、帯状疱疹を発症することがあります。 そのため、仕事などが忙しい年末や、お盆、連休後などの時期に発症する人が多くなります。 通常、発症は一生に1回ですが、2回3回と再発することもあります。

水痘帯状疱疹ウイルスに対する免疫力の低下

帯状疱疹を発症する人の7割は50代以上の方です。 帯状疱疹は主に免疫力の低下により発症します。50代以上は免疫力が弱まる年代であるため帯状疱疹を発症しやすいと考えられています。その他、過労、ストレス、その他の病気や治療に伴う体力・免疫力の低下も帯状疱疹を引き起こす要因になることがあります。

帯状疱疹の原因となる主な疾患

糖尿病や白血病、ステロイド剤の服用、その他手術や放射線照射、人工透析などによって免疫力が低下しているときには、帯状疱疹を発症しやすくなります 。

帯状疱疹(帯状ヘルペス)の症状は刺すような痛みと帯状の水ぶくれ

体の左右どちらかに帯のように水ぶくれができる

顔、胸、背中やお腹などの一部に発症することが多く、最初に刺すような痛みやかゆみがあらわれ、赤いブツブツとした発疹が出ます。やがて発疹は神経の分布の方向に沿って、体の左右どちらかに帯状に広がっていくのが特徴です。発疹の上に小さな水ぶくれがたくさんあらわれ、炎症によって膿を持ち、かさぶたに変化して通常は3週間ほどで治ります。

帯状疱疹(帯状ヘルペス)は帯状疱疹後神経痛などの後遺症やさまざまな症状を引き起こすことも

帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹の痛みは通常、発疹がひくとともに治まりますが、発疹が治っても3カ月から数年くらい痛みが続くことがあります。これが帯状疱疹後神経痛で、神経が炎症によって傷ついたことで起こると考えられています。帯状疱疹になった人の約3%に発生し、60歳以上の高齢の人や帯状疱疹の初期症状が重かった人に多くみられます。

難聴

物音や人の話し声が聞こえにくくなった状態が難聴です。ほお、下あご、耳から首や肩にかけて帯状疱疹が発症し、内耳の神経が侵されると耳に異常が起こります。はじめに耳痛や頭痛があらわれ、次第に難聴やグルグル回転しているようなめまいが起こります。皮膚の症状が治まったあともめまいなどの症状が残ることがあります。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。 耳が聞こえにくい(難聴)

顔面神経麻痺

顔の神経は脳から内耳の神経と一緒に耳の奥を通って耳の穴の近くから分かれて顔に分布しています。そのため、帯状疱疹が頬やあご、首など耳の近くに発症すると、顔の神経にも障害をもたらし、顔がこわばって目を開けたり閉じたりできないほどの麻痺が起こります。難聴やめまい、味覚障害をともなうこともあります。

角膜炎・網膜炎

目の周囲や額に帯状疱疹が発症し、顔の神経が侵されると、目の角膜や網膜に炎症を起こすことがあります。目の痛み、まぶしさ、涙が出るなどの症状があらわれ、進行すると視力が低下します。炎症の影響は視神経にまで及ぶことがあるため、最悪の場合失明することもあります。

その他の合併症

お腹に発症した場合は、片側の腹筋が麻痺して、大腸などの働きが低下し膨満感を感じたり、便秘になることがあります。また、陰部周辺に発症した場合は、膀胱や尿道の働きが低下して尿の出が悪くなることがあります。さらに、炎症が強く帯状疱疹が脊髄の深い部分にまで及ぶと、運動麻痺や筋肉の萎縮を起こすこともあります。

※上記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

帯状疱疹(帯状ヘルペス)かもしれない場合は速やかに受診を

病院で診察を受ける

頭痛、耳の痛みや腹痛など痛みはさまざまな部分に起きますが、赤い発疹や水ぶくれがあらわれたときは帯状疱疹が疑われますので、早めに皮膚科を受診しましょう。帯状疱疹は治療が遅れると後遺症が残ることもありますので、発症後2日間、遅くとも72時間以内の治療が大切です 。
また、50歳以上の方や、帯状疱疹のリスクが高い18歳以上の方は帯状疱疹ワクチンを接種することもできます。帯状疱疹ワクチンには、帯状疱疹の発症率を下げる効果と、発症しても重症化を防ぐ効果があります。 ワクチンを接種する際には、医療機関で副反応などの詳しい説明を受けてから接種するようにしましょう。

参考

・帯状疱疹jp (https://taijouhoushin.jp/
・IASR Vol. 39 p139-141: 2018
・日本老年医学会誌 Vol.58 No.1 p48-53:2021

プチメモ水ぼうそうにかかったことがない人は、帯状疱疹からの伝染に注意!

水ぼうそうにかかったことがない人は、帯状疱疹からの伝染に注意!

帯状疱疹は他人に伝染する疾患ではありません。ただし、帯状疱疹の水ぶくれの中にはたくさんの水痘帯状疱疹ウイルスが存在していますから、水ぼうそうのワクチンを接種したことがなく、かかったこともない乳幼児などが帯状疱疹に触れると、水ぼうそうになってしまう可能性があります 。また、妊婦が帯状疱疹になっても胎児への影響はほとんどありません 。ただし、妊娠中に水ぼうそうにかかった場合は重症化しやすい他、流産や先天性水痘症候群(胎児に手足の形成異常や目の炎症、小頭症が生じる疾患)など胎児にも影響が及ぶことがあります。水ぼうそうは水痘ワクチンで予防することができますが、妊娠中の方は接種することができません。妊娠中の水ぼうそうを予防するため、また妊娠中の人に水ぼうそうをうつさないためにも、水ぼうそうにかかったことのない人は予防接種を受けておきましょう。