擦り傷・切り傷
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擦り傷・切り傷

擦り傷は皮膚の一番外側にある表皮がこすり取られ、はがれた状態になる浅い傷です。皮膚の浅いところには神経がたくさんあるため、多くの場合、切り傷よりもひりひりとした痛みが続きます。切り傷は刃物などで表皮が切り裂かれた傷で、皮下細胞に達する深い傷になることもあります。擦り傷、切り傷とも適切な手当をしなければ、細菌などに感染して化膿することがあります。

井上修二 先生

監修

井上修二 先生 (いのうえしゅうじ) (共立女子大学名誉教授、医学博士)

擦り傷の症状は皮膚表面の炎症、深い切り傷は化膿することも

擦り傷は、皮膚の表面を擦ったことにより、炎症が起こっている状態です。深い切り傷は、炎症を起こしたところに砂や泥などの異物が入り、それを放置しておくとそこから細菌に感染し、化膿する恐れがあります。

擦り傷・切り傷に加えて筋肉の違和感や強い痛みを伴うときに考えられる疾患

※下記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

破傷風(はしょうふう)

土の中の破傷風菌に感染して発病する疾患で、死亡することもあります。傷から感染すると1〜2週間ほどで、首筋がはる、口がこわばって食べ物が飲み込みづらくなる、舌がもつれる、顔や体全体の筋肉が痛む、痙攣、呼吸困難などの症状があらわれます。錆びた刃物の切り傷や、細菌に汚染されたどぶ川のようなところでけがをしたときなどは要注意です。

蜂窩織炎(ほうかしきえん)

ごく小さな傷からブドウ球菌や連鎖球菌などの細菌が侵入し、皮膚の深い部分(真皮から皮下組織)に炎症を起こす疾患です。幼児や高齢者に多く、広い範囲の皮膚が熱をもって赤く腫れ上がり、触れると強い痛みがあります。進行すると化膿したり、高熱や悪寒が出ることもあります。

※上記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

傷口を洗い流したら適切な処置をして対処、傷が深いときは病院へ

擦り傷の治療法

細菌感染を防ぐために、まず傷口についた砂や泥などの異物を水でていねいに洗い流すことが大切です。異物が取れたら、傷口を乾燥させないようにラップなどで傷を覆う湿潤療法を行いましょう。このとき傷口に消毒液を使わないのが原則です。消毒液を使うと、治癒を遅らせることになります。※湿潤療法は下のプチメモを参照して下さい。

切り傷の治療法

出血が少ないときには、傷にふれないように注意しながら傷口を水で洗い流し、擦り傷同様、傷口を乾燥させないように湿潤療法を行います。出血量が少し多いときは傷口を心臓より高い位置に上げ、清潔なハンカチ、タオルなどを傷口に当てて手で圧迫して止血します。止血後は傷口を水でよく洗い、湿潤療法を行いましょう。※湿潤療法は下のプチメモを参照して下さい。

破傷風のワクチンを接種する

破傷風は、あらかじめ予防接種を受けておけば細菌が入っても感染を防ぐことができます。野外活動の多い人は、10年に1回を目安として、ワクチンの接種をおすすめします。小学生以下は、無料で定期接種を受けていますので、破傷風に感染する心配はありません。

傷が深いときや異物が残っているときは外科を受診する

傷が大きく深いときや、傷のところに異物が残っている恐れがあるようなときは、主治医に相談するか外科を受診しましょう。また、痛みが続くときは、ばんそうこうなど傷口を覆っているものをはがして傷を観察しましょう。傷の周囲が赤く腫れて、熱をもったり膿が出ていたら、早めに外科を受診することをおすすめします。

プチメモ新しい創傷治療法「湿潤療法」

新しい創傷治療法「湿潤療法」

最近注目されている傷の治療法が「湿潤療法」です。従来は、ガーゼで傷を覆い、傷口から出てくる浸出液をガーゼが吸い取ることで乾燥させて治す方法が一般的でした。しかし、浸出液は傷を治す成分を含んでいるため、湿潤療法では傷をラップなどの被覆材でぴったり覆って湿った環境を保ち、浸出液を最大限に利用します。湿潤療法のほうが痛みが少なく、傷の治りも早いといわれ、従来の方法より感染率が低いこともわかっています。
<湿潤療法の行い方>
1. 傷口を水でよく洗う。
2. 傷を覆うよう、少し大きめのラップをあてて、縁をテープで留める。
3. 翌日から毎日傷とそのまわりを水洗いし、ラップを交換する。