悪寒(おかん)
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悪寒(おかん)

さっきまで何ともなかったのに、急にさむけがして、上に一枚羽織っても体が全然暖かくならない――。それは高熱が出る前に起こる悪寒(おかん)かもしれません。ここでは悪寒(おかん)やさむけの原因や予防法、それらを改善するための対処法などをご紹介します。

永武 毅 先生

監修

永武 毅 先生 (桜みちクリニック 院長)

悪寒(おかん)とはゾクゾクとした病的なさむけがする症状のこと

悪寒(おかん)とは、発熱の初期に起きる、体がゾクゾクする病的なさむけのことをいいます。普通の風邪ならば、発熱しても体温が38℃以上の高熱になる可能性は低く、さむけや頭痛などの全身症状(頭痛、倦怠感、さむけ、食欲不振など)は弱いのですが、インフルエンザでは悪寒(おかん)やさむけの後に38~40℃の高熱や、関節痛、筋肉痛などがあらわれます。悪寒(おかん)だけでなく歯がガチガチ鳴ったり、体がブルブルと震えたりするような症状を伴う場合は悪寒戦慄(おかんせんりつ)といいます。

悪寒(おかん)やさむけの原因はウイルス感染症や内臓疾患などが考えられる

ウイルスなどの感染による悪寒(おかん)やさむけ

風邪をはじめとする感染症では、さまざまなウイルスなどの病原体が体内に侵入することで免疫機能が活性化され、くしゃみやのどの痛み、頭痛のほかに、悪寒(おかん)・さむけの後にまれに高熱があらわれることがあります。

感染症以外の疾患による悪寒(おかん)やさむけ

まれですが、広範囲のやけどや放射線などの物理的な刺激、薬物などの化学的な刺激などによって悪寒(おかん)やさむけを伴う高熱が出ることがあります。また、悪性腫瘍や膠原(こうげん)病でも悪寒(おかん)を伴う高熱を起こすことがありますが、インフルエンザのように突然にあらわれることはありません。

肺炎や腎盂腎炎(じんうじんえん)、胆嚢炎(たんのうえん)、虫垂炎(盲腸炎)によっても悪寒(おかん)やさむけを伴う高熱があらわれることがあります。これらの疾患では、お腹や背中、腰に激しい痛みがあらわれる、呼吸が苦しくなるなどの症状も出てきます。

悪寒(おかん)に加えて発熱や吐き気などの症状を伴う場合に考えられる疾患

※以下の疾患の中には、医師の診断が必要なものもあります。
症状が続くなど心配な場合には、早めに医師の診断を受けましょう。

風邪の場合の悪寒(おかん)やさむけ

風邪の症状には鼻水、のどの痛み、発熱、せきなどがありますが、発熱に伴って悪寒(おかん)やさむけが起こることがあります。ウイルスなどの病原体が体内に入り込むと、外敵から身を守るために免疫機能が活性化します。脳の中にある視床下部という、体温を調節する部分(体温調節中枢)が体温を何度に維持するかという設定温度(セットポイント)を決めているのですが、ウイルスに抵抗するため、体温を普段よりも高い温度に設定します。すると体は寒い環境に置かれたように感じ、それが悪寒(おかん)やさむけとしてあらわれると考えられています。
“普通感冒”と呼ばれる、いわゆる風邪では、のどの痛み、鼻水、熱っぽさやさむけなどの症状がひき始めにあらわれ、程度は個人差があります。しかし、風邪の中には重い咽頭炎を起こし、高熱や悪寒(おかん)、倦怠感、筋肉痛、頭痛を伴うものもあります。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。 風邪(かぜ)

インフルエンザの場合の悪寒(おかん)やさむけ

インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染症で、全身の筋肉痛、高熱、頭痛、鼻水、くしゃみ、のどの痛みなどがあらわれます。その特徴は、急速に38~40℃の高熱とともに筋肉痛などの全身症状が出ることです。発熱はときに40℃以上になることもあり、その際に全身がゾクゾクするような悪寒(おかん)を引き起こすことがよくあります。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。 インフルエンザ

肺炎の場合の悪寒(おかん)やさむけ

ウイルスや細菌などが肺に侵入することで肺の中に炎症が起こります。インフルエンザなどのウイルスであればウイルス性肺炎、肺炎球菌などの細菌であれば細菌性肺炎となります。38℃以上の高熱が1週間以上続くことがあり、高熱の前に悪寒(おかん)を感じることがあります。

食中毒の場合の悪寒(おかん)やさむけ

細菌やウイルスに汚染された食べ物や飲み物を摂取することによって、下痢や吐き気、嘔吐、発熱などの症状を起こします。発熱に伴って悪寒(おかん)を感じることがあります。食中毒の原因となる菌はいくつかありますが、とくにサルモネラ属菌は高い熱が出ることで知られており、全身がゾクゾクとする悪寒(おかん)やさむけを感じることも少なくありません。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。 食中毒

腎盂腎炎(じんうじんえん)の場合の悪寒(おかん)やさむけ

血液からろ過されて生じた尿が集まる腎盂という部分や腎臓そのものが細菌に感染して起こる病気です。38℃以上の高熱やゾクゾクするほどの悪寒(おかん)を感じることが少なくありません。また、尿の濁りや血尿、背中から腰にかけての痛みや吐き気、嘔吐などがあらわれたり、排尿時の痛みや尿の回数が増えることもあります。原因の多くは、大腸菌などの腸内細菌が尿道からさかのぼるようにして腎臓に到達することによります。

胆嚢炎(たんのうえん)の場合の悪寒(おかん)やさむけ

胆嚢にできた結石(胆石)によって、胆汁を胆嚢から導き出す胆嚢管が詰まり、これに細菌感染が加わることで胆嚢が炎症を起こしている状態をいいます。みぞおちから肋骨にかけて激しい痛みを感じることが大きな特徴です。悪寒(おかん)とともに38℃以上の高熱が出て、吐き気、嘔吐などの症状もあらわれます。胆石は脂肪分の多い食事が原因でできるといわれています。

虫垂炎(盲腸炎)の場合の悪寒(おかん)やさむけ

盲腸の先についている虫垂に炎症が起こる疾患で、盲腸炎とも呼ばれます。急激な腹痛が突然起こると同時に、37~38℃の発熱が生じ、発熱に伴い悪寒(おかん)を感じたり、吐き気や嘔吐などが見られたりします。痛みは多くの場合、初めはみぞおちにあらわれ、徐々に右下腹部に移行していきます。

※以上の疾患の中には、医師の診断が必要なものもあります。
症状が続くなど心配な場合には、早めに医師の診断を受けましょう。

一時的な悪寒(おかん)は安静にして市販薬で対処、長引くときは病院へ

暖かくして、安静にする

悪寒(おかん)やさむけを感じるときは、その後に高熱が生じることが予測されるため、安静にすることが大切です。寒くて体が冷えているのとは違うので体を温めることで治まるわけではありませんが、風邪のひき始めに体が冷えていると、生命の維持に欠かせない「酵素」の働きが弱くなったり、血流が悪くなったりして、体内に老廃物がたまりやすくなります。それにより自然治癒力が弱まり、風邪が長引いてしまう可能性も出てくるので、室温を上げたり厚着をしたり、温かい飲み物を飲んだりして体を温めるようにしましょう。実際の体温が一定の温度まで上昇しきるまで、悪寒(おかん)やさむけは続きます。

市販の薬を使う

熱が出てきた場合、ウイルス感染が強く疑われ、かつ効能がある場合は一時的に熱を抑えるためにアセトアミノフェンなどが配合された解熱鎮痛薬やかぜ薬を服用するとよいでしょう。

かぜの場合の悪寒やさむけに関連するアリナミン製薬の製品

病院など医療機関で診察を受ける

悪寒(おかん)やさむけの原因はさまざまです。症状が長引いたり、高熱が出たときには医療機関を受診しましょう。特にかかりつけの医師がいない場合は、内科を受診するとよいでしょう。ただし、悪寒(おかん)・さむけや高熱に加え、激しい頭痛、意識障害、全身痙攣、呼吸困難などの症状がある場合はすぐに救急医療機関を受診するようにしましょう。

日常的に規則正しい生活習慣を心がけて悪寒(おかん)を予防しよう

悪寒(おかん)やさむけを引き起こす発熱の主な原因は、ウイルスや細菌による感染症です。感染症の対策は規則正しい生活習慣やマスク、うがい、手洗いなどによる感染予防が中心となります。

※画像はイメージです

参考
川名正敏 総監修, オールカラー版 家庭の医学【第3版】成美堂出版, 2016
主婦の友社 編, 家庭の医学 主婦の友社, 2018