抜け毛・脱毛
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抜け毛・脱毛

健康な人の毛髪は1日に平均90本ほど抜け、3カ月くらいでまた新しい髪が生えてきます。そして、4〜6カ月ほどで新しい毛髪に生まれ変わります。ところが、生活習慣やストレス、ホルモンの影響などによってこのヘアサイクル(毛周期)が乱れ、毛髪が抜けやすくなったり、新しい毛髪の成長に長く時間を要する場合があります。

井上修二 先生

監修

井上修二 先生 (いのうえしゅうじ) (共立女子大学名誉教授、医学博士)
肥満研究の世界的権威、医学博士、内科医。 栄養学に精通している。

日常生活から考えられる原因

ヘアスタイルによる刺激

ポニーテールのようなまとめ髪やいつも同じ位置の分け目など、髪を一定方向に引っ張り続ける髪型が、毛根の一部で育毛に必要な栄養分を運ぶ毛乳頭に負荷をかけます。毛乳頭への負荷で血流が悪くなると、毛髪の成長を促す毛母細胞に栄養分を運ぶ機能が弱まることで抜け毛を起こしやすくなります。

ダイエットや喫煙などの生活習慣

過度のダイエットによって毛髪の原料であるたんぱく質が不足すると、毛乳頭の機能が弱まり、栄養分が運ばれなくなります。そのため、栄養不足で毛髪が弱くなり抜け毛を引き起こしやすくなります。また、喫煙も血管を収縮させて毛乳頭への血行を悪くするため、必要な栄養分が毛根へ供給されず髪が衰えて抜けやすくなります。

過剰なストレス

過剰な精神的ストレスによって、毛乳頭が一時的に機能を停止して、抜け毛が増えたり毛髪が細くなったりします。また、部分的に毛髪が抜け、新しい毛髪が一時的に生えなくなることがあります。これがいわゆる円形脱毛症です。また、精神的なストレスや苦痛を紛らわすために、自分で無意識のうちに自身の髪を抜いてしまう脱毛癖の悪化(自己脱毛症)が原因の場合もあります。

ホルモンバランスの変化

妊娠中などは、毛髪の成長を促す女性ホルモンの分泌量が増えて抜け毛が減ります。しかし、出産後にはホルモンのバランスが元に戻るため、毛髪が一気に抜けることがあります。また、性別に関わらず、男性ホルモンが過剰に分泌されると毛乳頭がうまく機能しなくなり、栄養分が運べなくなることで抜け毛が増えることがあります。これは男性型脱毛症(AGA)の原因と考えられています。

頭皮の老化

加齢にともなって頭皮も老化し、硬くなっていきます。頭皮が硬くなると血行が悪化し、毛髪の育成を促す毛母細胞に栄養分を運ぶ機能が弱くなり、抜け毛を引き起こします。

抜け毛・脱毛の原因となる主な疾患

抜け毛の原因となる疾患には、ホルモンの過剰分泌が原因で起こる男性型脱毛症(AGA)や、女性ホルモンの影響で抜け毛が増えるびまん性脱毛症などがあります。また、円形脱毛症や白癬菌が頭部に感染して起こる白癬症では、毛髪の一部が抜け落ちる症状を引き起こします。その他、甲状腺機能低下症や膠原病、リウマチ様関節炎など全身的な疾患でも抜け毛が起こることがあります。

抜け毛・脱毛をともなう疾患

※以下の疾患は、医師の診断が必要です。
下記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

男性型脱毛症(AGA)

男性ホルモンが過剰に分泌されると、毛髪の成長が抑制されて毛髪がやせ細り、徐々に新しい毛髪が生えなくなっていきます。とくに前頭部から頭頂部にかけての毛髪は男性ホルモンの影響を受けやすいため、前頭部の左右が薄くなり、次第に毛髪が後退していきます。

びまん性脱毛症

女性に多くみられる疾患で、男性ホルモンの過剰分泌による男性型脱毛症(AGA)や、出産や更年期障害など女性ホルモンの影響による脱毛症、65歳以上の方に多くみられる加齢にともなう脱毛症などがあります。女性の場合、男性とは異なり、頭頂部が薄くなるのが特徴です。

円形脱毛症

円形脱毛症は、主にストレスによって毛乳頭の機能が抑制され、毛髪の一部が丸く抜けおちる症状を引き起こします。突然起こるのが特徴で、通常は円形にごっそり抜け、それが頭部のあちらこちらに複数できることがあります。なかには頭髪全体が抜けるものや、まゆ毛やわき毛が抜けおちる場合もあります。多くは治療で元に戻ります。

白癬症

頭皮の毛穴や毛髪に白癬菌が感染し、頭皮の炎症と脱毛を引き起こします。頭部に丸く脱毛斑が生じたり、毛穴が赤く腫れ上がることがありますが、かゆみはありません。白癬菌に感染した部分に残っている毛を引っ張ると、抵抗なく抜けることが特徴です。この疾患・症状に関連する情報はこちら。

※以上の疾患は、医師の診断が必要です。
上記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

日常生活でできる予防法

髪と頭皮をしっかり洗う

毛髪と頭皮にはホコリや排ガス、タバコの煙などが外から付着し、内側から皮脂や汗などが分泌されます。1回のシャンプーでは髪の汚れは落とせても、頭皮の汚れが残っている場合があります。シャンプーは2回に分けて、2回目は指の腹で頭皮を優しく揉むように洗い、すすぎ残しがないように丁寧に洗い流しましょう。また、脂性や乾燥肌など、頭皮のタイプに合わせたシャンプーを選んで使用することも大切です。

洗髪後はなるべく自然乾燥を心がける

タオルで髪の毛をゴシゴシ拭くと髪の毛の成分を保護するキューティクルを傷つけてしまいます。濡れた髪のまま寝てしまうと髪は大きなダメージを受けますから、きちんと乾かしてから寝ましょう。ただし熱すぎるドライヤーは髪を傷つけてしまいますので、急ぐ時以外はなるべく自然乾燥を心がけましょう。ドライヤーを使うときには、髪から10cm以上離し1ヵ所に集中して熱が当たらないよう優しく乾かしましょう。

頭皮マッサージをする

マッサージによって頭皮の緊張がほぐれ、血行が良くなり育毛の効果が促進されます。生え際から頭頂部に向けて、指の腹で頭皮を軽くたたいたり、円を描くようにもみほぐしましょう。このときに、爪を立てたり、力を入れすぎないように注意しましょう。朝、目が覚めた時やシャンプーの前、寝る前のマッサージが効果的です。

バランスの良い食生活を心がける

髪の主成分である良質なたんぱく質は、大豆や肉、魚、卵からとるのがおすすめです。また、育毛のための栄養素となるビタミンB群、とくにB2とB6はいわしやさんまなどの青魚、レバー、納豆、牛乳などから、血行促進に役立つビタミンEは黒ゴマやピーナッツ、アーモンドなどから摂取しましょう。また、喫煙は髪の健康にはおすすめできません。

対処法

自分にあったシャンプーを選ぶ

健康的な毛髪を育てるためにも、頭皮を清潔に保つことが大切です。脂性の人には、アルカリ成分の多い洗浄力の強いタイプ、乾燥タイプの人には、洗浄力のマイルドなタイプのシャンプーが適しています。洗髪後に刺激を感じたりかゆみを感じる場合には、香料や着色料を含まない低刺激性のものを選んで使用しましょう。

市販の育毛剤を使う

育毛剤を使って頭皮の血行を良くしたり、育毛に必要な亜鉛を頭皮に補給することで、抜け毛を少なくすることができます。男性用はもちろんですが、女性用の育毛剤や、育毛シャンプーなどもありますので、活用してみるのも一つの手です。

病院で診察を受ける

「抜け毛が続く」「大量に抜ける」といった場合は、主治医に相談するか、もしくは皮膚科で診察を受けましょう。

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