耳の痛み
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耳の痛み

耳の痛みは、耳そのものの異常で起こる場合と、耳以外の部分の痛みが広がって耳の付近で感じるものがあります。のどやあごの疾患が原因で起こることも少なくありません。

井上修二 先生

監修

井上修二 先生 (いのうえしゅうじ) (共立女子大学名誉教授、医学博士)

日常生活から考えられる原因

日常生活から考えられる原因

寒くて風が強い日に外に出ると、耳がピリピリと痛んだり、ちぎれるような痛みを感じます。耳は露出していることが多く、さらに指先や足先と同様に血行が悪くなりやすいので、寒くなると痛むことがあるのです。

急激な気圧差

耳の中の気圧は、通常は外の気圧と同じ状態に保たれています。しかし、飛行機の着陸時やスキューバダイビング、エレベーターの急下降時のときのように急激に外の気圧が変化すると、この変化についていけず体の内外に気圧差が生じます。この気圧差によって鼓膜が内側に押し出されることで痛みを感じます。

耳かきなどでの損傷

耳掃除などで耳道を傷つけると、痛みが生じます。その他、虫や水などが入ると、炎症を起こして耳が痛むことがあります。

耳の痛みの原因となる主な疾患

耳の異常で痛みを感じる疾患には、耳管狭窄(きょうさく)症、中耳炎、外耳(道)炎があります。また、咽頭炎、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)では三叉(さんさ)神経痛を引き起こすことがありますし、顎(がく)関節症では痛みが耳にまで広がることもあります。その他、耳性帯状疱疹(ラムゼイ・ハント症候群)では、耳に強い痛みをともなう水ぶくれができます。

耳の痛みをともなう疾患

※以下の疾患は、医師の診断が必要です。
下記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

耳管狭窄(きょうさく)症

中耳にあり、鼻やのどに繋がっている耳管は、ときどき開閉することで中耳と外の気圧を調整しています。この耳管が閉じたままになる状態が耳管狭窄症で、中耳の気圧が外の気圧より低くなるため、鼓膜が内側に引っ張られ、音の振動を十分に伝えられなくなることで低音の耳鳴りや耳に痛みが起こります。のどや鼻に炎症が起きたときや、飛行機に乗ったときの気圧の変化などで起こることがあります。

中耳炎

細菌やウイルスに感染し、中耳に炎症が起こる疾患です。風邪やインフルエンザなどの感染症の後、急な耳の痛みに襲われたときは中耳炎を疑う必要があります。中耳に膿が溜まり、その膿が出口を求めて鼓膜を押すために強い耳の痛みが生じ、発熱をともない、黄色っぽい膿のような耳だれが出たり、耳が聞こえにくくなることもあります。治療が不十分だと慢性化することもあります。

外耳(道)炎

耳の入り口に近い外耳道に炎症が起きる疾患で、ひっかき傷に細菌が感染したり、水が耳に入ることなどによって起こります。耳の入り口付近にかゆみや痛みが生じ、腫れによる異物感や詰まった感じとともに、耳鳴りや水のような耳だれがみられることもあります。口を動かしたときや、耳たぶを引っ張ったり押したりすると痛みが強くなるのが特徴です。

咽頭炎

ウイルスや細菌などによってのどの粘膜に炎症を起こす急性咽頭炎は、のどの粘膜が赤く腫れ、のどのつかえ感の他にのどの痛みや頭痛や発熱をともない、痛みが耳の奥に広がることがあります。急性咽頭炎を繰り返すと、慢性咽頭炎に進行することがあります。強い痛みや発熱はなくなりますが、のどに異物感が続き、物を飲み込むときに痛みを感じることもあります。

顎(がく)関節症

噛み合わせが悪かったり、食べ物を片側の歯だけで食べるくせがある、さらに、歯ぎしりや頬杖をつくくせなど、あごに負担がかかる要因が重なり合うことで発症します。また、ストレスなどであごの筋肉が緊張している人にも起こりやすいといわれています。症状が進行すると、口が大きく開けられず、無理に開けようとするとあごや耳の奥に痛みが広がるようになります。

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)

ムンプス(おたふくかぜ)ウイルスの感染によって、唾液腺の一つで耳の付け根にある耳下腺が炎症を起こす疾患です。耳の痛みから始まり、高熱、食欲不振、頭痛、嘔吐などがあらわれます。まれに難聴や脳炎などを併発することがあるので注意が必要です。大部分は15歳以下の小児がかかり、春から夏に流行する傾向があります。伝染力が強く、流行しやすいので流行性耳下腺炎とも呼ばれます。

三叉(さんさ)神経痛

顔のこめかみから目、あご、頬と三本に枝分かれした三叉神経が支配する領域に起こる痛みを三叉神経痛といいます。多くは、脳に流れる血管がこめかみで神経に触れたり、神経を圧迫することによって起こります。目、あご、頬を中心に、突然、ぴりぴりとした痛みがあらわれ、痛みは、耳の奥から頭に及ぶこともあります。

耳性帯状疱疹(ラムゼイ・ハント症候群)

帯状疱疹ウイルスが脳から耳に出ている聴神経や顔面神経に感染する疾患です。はじめに耳たぶの痛みや頭痛が起こり、次いで耳の入り口の近くに痛みをともなう小さな赤い発疹や水ぶくれが多くあらわれます。そして、めまいと耳鳴り、難聴が起こり、さらに、表情が乏しくなったり、目を開けたり閉じたりできなくなるなどの顔面神経まひがあらわれるのが特徴です。

※以上の疾患は、医師の診断が必要です。
上記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

日常生活でできる予防法

寒い日は耳をしっかり温める

耳を露出していると感覚がなくなるほどに冷たくなって耳が痛くなったり、しもやけになることもあります。寒い日や、風の強い所に行くときはマフラーや帽子、耳あてで耳を冷やさない工夫をしましょう。

耳かきをするときに注意をする

耳かきを奥まで入れすぎると、耳を傷つけるだけではなく、耳あかが奥に押し込まれて耳の痛みが生じたり、耳が聞こえにくくなることもあります。耳かきをするときは、耳の入り口から1cm程度の範囲を、綿棒で優しく掃除しましょう。どうしても耳の奥が気になるようなときは、耳鼻咽喉科で耳掃除をしてもらうようにしましょう。

対処法

気圧差で耳が痛くなったら耳抜きをする

耳の中と外の気圧調整をするためには唾液を飲み込む耳抜きが効果的です。飛行機に乗っているときは、気圧が大きく変わる着陸時にあめやガムを口に入れると痛みが出にくくなります。また、寝ているときや、目が覚めてからの数時間は耳の気圧調整がうまくいかないので、できれば着陸2時間前には目を覚ましておくのが良いでしょう。

病院で診察を受ける

耳の痛みが長く続いたり、急な痛みに襲われたとき、めまいや難聴、耳の閉塞感、耳鳴りなどをともなうようなときは、耳鼻咽喉科を受診しましょう。また、飛行機から降りて次の日も耳の痛みが続く場合も、軽視せずに診察を受けるようにしましょう。

プチメモ鼻炎や風邪の人、乳幼児は飛行機に注意

鼻炎や風邪の人、乳幼児は飛行機に注意

アレルギー性鼻炎だったり、風邪気味で体調が悪い…そんな人が飛行機に乗ると悩まされるのが、着陸時の耳の痛みや耳鳴り。ときには針で刺されるような痛みに襲われたり、耳鳴りが数日続くこともあります。実はこれらの症状は、風邪薬やアレルギー性鼻炎の薬を服用することで軽減することができるのです。着陸時に合わせて薬の効果が持続する状態になるように逆算して、薬を服用するようにしましょう。また、乳幼児は耳管が細いため、気圧にとても弱いので、移動の際はなるべく飛行機は避け、可能であれば新幹線などを使うようにしましょう。